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内村航平、10連覇で途切れても。
「醜い姿でも代表で」と言える強さ。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byAFLO
posted2018/05/01 16:30
表彰式後、史上最年少の19歳2カ月で優勝した谷川翔、3連覇を果たした村上茉愛らとともに自撮りで記念撮影する内村。
29歳で3位なので、いいんじゃないか。
国内で敗れたのは10年ぶりだが、むしろ喜んでいるほどの感情も見せた。
「負けたということで、肩の荷が降りたんじゃないかな。勝っているときは自分自身との戦いなんですが、超えるのが一番難しい存在は自分ですから。こうやって下(の若手選手)が出てきたので、あいつよりこれだけ取ればいいんだなということが明確にできる。これからは今まで味わっていなかったことを味わえるような気がしています」
3位。表彰台の内村はうれしそうだった。今やおなじみの光景になった内村の自撮りによる選手同士の記念撮影でも、笑顔は続いた。スタンドからはねぎらいの声が降り注いだ。
「ファンの方が『お疲れ様でした』と言ってくれて、すごく温かいなと思いました。優勝のときは熱がすごかったんですが、3位でも温かいんだなと。『熱い』のと『温かい』の違いがありましたね。まあ、29歳で3位なので、いいんじゃないかと思います。ここから先は結果じゃないんだろうなと思います」
「醜い姿であっても代表であり続けたい」
そうは言っても、白旗を揚げるつもりはない。世界選手権(10月25日~11月3日=カタール・ドーハ)で団体総合に出るには、全日本個人総合選手権予選と決勝の点を持ち越して争うNHK杯(男子5月20日)で、2位以内になることが条件だ。
全日本選手権決勝で気を吐いたことで、内村は首位の谷川翔と0.832点差、2位の白井とは0.500点差と、十分に巻き返しが可能な状況をつくった。
「ギリギリでNHK杯につながったかな。きょうも、もう少し拾える部分はあった。しっかりミスなく、着地まで止めていければ、もう一個、(順位を)上げることができるかなという感じですね」
内村には「代表に入り続けることで東京五輪が見えてくる」という考えがある。
「醜い姿であっても代表であり続けたい」
本人は気づいていないかもしれないが、その姿勢こそが美しいのである。