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内村航平、10連覇で途切れても。
「醜い姿でも代表で」と言える強さ。

posted2018/05/01 16:30

 
内村航平、10連覇で途切れても。「醜い姿でも代表で」と言える強さ。<Number Web> photograph by AFLO

表彰式後、史上最年少の19歳2カ月で優勝した谷川翔、3連覇を果たした村上茉愛らとともに自撮りで記念撮影する内村。

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矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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AFLO

 歴史が塗り替えられた瞬間、内村航平(リンガーハット)は満面に笑みを浮かべ、新チャンピオンを心からの握手で祝福した。

 連覇は10で途切れた。自身より10歳若い19歳の谷川翔(順大)が王座に就いた。それは奇しくも内村が初めて頂点に立ったときと同じ年齢だった。

「おめでとうという感情しかないですね。すごく晴れやかですよ。ようやく解放されました」

 言葉通りのすがすがしさでそう言った。

 4月27日から29日まで東京体育館で行なわれた体操の全日本個人総合選手権で、内村は初優勝した谷川翔、2位の白井健三(日体大)に続く3位になった。'08年のインカレで植松鉱治(当時仙台大)に敗れたのを最後に10年間続いていた国内の連勝も27で止まった。しかし、表情にも口調にも悔しさはかけらもなかった。

10連覇時には「負けた方が……」。

 思えば前人未踏の10連覇を達成した昨年は「もう、地獄ですよね」と疲れ切った顔で苦笑していた。

「演技中は負けた方が楽になるなと思っていて。ここで勝ったら期待に応え続けないといけないですから」

 そんなふうに話していたものだ。勝ち続ける者だけが味わう計り知れない重圧から解き放たれたのが、今回の全日本選手権だった。

 昨年10月の世界選手権(カナダ・モントリオール)、個人総合予選・跳馬の演技で着地した際に左足首を痛め、大会を途中棄権した。柔らかいマットの上で着地を伴う練習を再開したのは今年1月から。着地の衝撃が強いゆかや跳馬の練習を少しずつできるようになったのは2月に入ってからだった。

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