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岩田康誠の判断が光った天皇賞・春。
シュヴァルの死角を突くコース取り。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKyodo News
posted2018/05/01 11:15
勝利を祝う式典に、主役レインボーラインの姿はなかった。無事を祈りたい。
岩田「嬉しいですが、馬が心配です」
レインボーラインが自力で歩いて馬運車に乗った時点で、最悪の事態は免れたように思われた。それでもやはり、勝ち馬のいない表彰式は寂しく、2008年アドマイヤジュピタ以来2度目の天皇賞・春制覇となった岩田も複雑そうな表情だった。
「嬉しいですが、馬が心配です。無事で、次も出走できればと思います」
1998年メジロブライト以来20年ぶり、2度目の天皇賞・春制覇となった浅見秀一調教師は、「着順は最高でしたが、レース後の馬の状況が状況なので、心苦しいです。次に向けて何とかケアしてあげたいと思います」とコメントした。
レース終了後2時間ほど経ってから、同馬は前肢跛行と診断された。「跛行」とは「脚を引きずって歩くこと」だから、病名ではなく症状である。何が原因で跛行に至ったか明らかになるには、もう少し時間を要するだろう。
クビ差の2着はシュヴァルグラン、そこから半馬身差の3着はクリンチャーだった。
シュヴァルグランは、道中3番手の絶好位から早めにスパートし、後続に脚を使わせながら押し切ろうとしたが、叩き合いで競り落とされた。昨年までキタサンブラックが見せていたような横綱相撲の競馬をしたが、ボウマンは「直線で目標になる馬が前にいなくなってフワフワしてしまった」と話した。
シュヴァルグランをマークしながらレースを進めたクリンチャーは、直線で突き抜けそうに見えた場面もあったが、伸び負けした。それでも勝ち馬からコンマ1秒差と、力のあるところを見せた。この秋フランスに遠征し、フォワ賞を叩いてから凱旋門賞に参戦するという。手綱は武豊に戻る。
成長力のあるステイゴールド血統だけに。
シュヴァルグランかクリンチャーが勝ってもおかしくないレースだったが、3コーナー手前で有力馬の出入りが激しくなったとき、あえて動かなかったレインボーラインの岩田のペース判断が光った。
直線で迷いなくシュヴァルの内を突いたことも勝因だろう。シュヴァルの外からはクリンチャーが伸びてきており、もしレインボーがらそちら側から迫っていたら、シュヴァルにもうひと伸びされていたかもしれない。
シュヴァルにしてみると、伸びてくる馬がいないと思っていた内から一気に来られたがゆえに対応が遅れたのだろう。
レインボーラインは、成長力のあるステイゴールド産駒だ。ここがピークではなく、今後もっと強くなる可能性がある。それだけに、右前脚の怪我が軽症であることを願いたい。