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岩田康誠の判断が光った天皇賞・春。
シュヴァルの死角を突くコース取り。
posted2018/05/01 11:15
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Kyodo News
長らく脇役に甘んじてきた実力馬が、GI10度目のチャレンジで、ついに最強ステイヤーの座についた。
スタミナ自慢の17頭が集結した第157回天皇賞・春(4月29日、京都芝外回り3200m、4歳以上GI)を制したのは、岩田康誠が騎乗した2番人気のレインボーライン(牡5歳、父ステイゴールド、栗東・浅見秀一厩舎)だった。ゴール後、レインボーラインの歩様に異常を感じた岩田が下馬し、場内が騒然となった。診断の結果、右前肢跛行と発表された。
タフな戦いだった。
最初の1000m通過は1分00秒1。数字だけ見ると良馬場の平均ペースだが、馬群はハイペースを示す縦長になった。
数字以上に厳しい流れだったはずだが、ヒュー・ボウマンが乗る1番人気のシュヴァルグランは楽な手応えで先行している。
向正面なかほどから、川田将雅のサトノクロニクル、ミルコ・デムーロのトーセンバジル、クリストフ・ルメールのアルバート、三浦皇成のクリンチャーといった有力馬が動いて前との差を詰めた。
そんななか、岩田のレインボーラインは中団から後方に控えたまま脚を溜めている。
ゴールを駆け抜けた瞬間、異変が。
最後の直線。持ったままで先頭に並びかけたシュヴァルグランがスパートをかけ、ラスト200m地点で完全に抜け出した。
外からクリンチャーが伸びてきて、この2頭のマッチレースかと思われた次の瞬間、内に進路をとったレインボーラインが猛然と追い込んできた。
内のレインボーラインと外のシュヴァルグランによる壮絶な叩き合いとなり、レインボーラインがクビ差抜け出したところがゴールだった。
勝ちタイムは3分16秒2。メンバー最速の上がり3ハロン35秒2の末脚を繰り出しての勝利だった。
しかし、レインボーラインが栄光のゴールを駆け抜けたまさにそのとき、異変が起きた。完歩を伸ばした同馬が、ガクッと首を大きく下げるような格好になったのだ。
岩田はすぐに手綱を引いた。そうして、痛めた前脚に負担がかからないよう馬の首を起こし、徐々に速度を落として、馬から降りた。
GI優勝馬の鞍上が入線直後に下馬するという予期していなかったシーンに、スタンドの6万9000人がざわめいた。