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ペトロヴィッチ流で自信を得た札幌。
短期間で人とチームを変えて4位。
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph byGetty Images
posted2018/04/23 17:30
5年半にわたって指揮を執った埼玉スタジアムへの“凱旋”。ミハイロ・ペトロヴィッチ監督率いる札幌はたくましく勝点1を得た。
「前が空いていたらボールを運べ」
もちろん、いいサッカーをしているという自信もある。
「いままでは守って守ってカウンターで決めるスタイルでしたけど、いまはサイドからのセンタリングに加えて中央からの崩しなど、バリエーションが増えた。やっていて全然違うんです。フィールドプレイヤー10人の意図が合うと、とても楽しいですよ。自分が起点になってゴールが生まれたときなんか。そういうところをもっと増やしていきたい」
新監督の指示について尋ねると、ちょっと興味深い答えが返ってきた。
「前が空いていたらボールを運べ、ですね。個人的にもチーム全体でも、それはいちばん言われています。ボールを保持するチームではなかったですから、ぼくらにとって新しい試みですね」
前が空いたらボールを運べ――。
この言葉から思い出すのが、2012年の浦和である。
ペトロヴィッチは就任早々、手数をかけて攻め続ける攻撃的なスタイルを築き上げ、前年15位と降格の危機に瀕したチームを3位に引き上げた。
「少なくとも、もう残留という目標はない」
見違えるように生まれ変わったチームの中で、別人のようなプレーを見せた選手がいる。鈴木啓太だ。それまで「水を運ぶ」役回りだったが、ミシャ体制ではチャンスがあると果敢に前線に駆け上がり、フィニッシュにも絡むようになった。
広島や浦和でそうだったように、ペトロヴィッチは札幌でも短期間で選手を変え、チームを変えて結果を出した。これがプロの監督の仕事だろう。
スタメン平均年齢24歳と、今節18チーム中いちばん若いチームは、経験豊かな監督の下で多くを吸収し、日に日に自信を深めている。
気が早いが福森に今季の目標を尋ねると、力強い言葉が返ってきた。
「去年の11位以上は最低目標。いま4位ですから、少しはACLを見てもいいのかな。少なくとも、もう残留という目標はない。頭の片隅にもありません。ベクトルは上を向いていますよ」
上を向いて歩くシーズン、札幌はどんな軌跡を描くのだろう。