スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
快進撃球団と若手新監督。
大リーグの新旧対決が面白い。
posted2018/04/21 09:00
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
AFLO
大谷翔平投手が初の試練に遭った。マメができたのは気の毒だったが、レッドソックス偵察部隊にかなり研究されたことも確かだろう。スプリットやスライダーでストライクを取れず、フォーシームに頼らざるを得なくなると、さすがに苦しい。大リーグの打者が速球にめっぽう強いことは先刻承知のはずだ。
あとは、内角攻めができないことと、球質が軽いこと。この弱点を克服して、壁を乗り越えてほしいものだ。あれだけの修正能力に恵まれているのだから、悲観的になる必要はないだろう。
もっとも、大谷だけが大リーグを動かしているわけではない。開幕して約3週間だが、注目すべき現象は早くも起こっている。大谷が初黒星を喫した1日前にさかのぼってみよう。
4月16日現在、ア・リーグで最高勝率を記録しているのはボストン・レッドソックスだ(13勝2敗で8割6分7厘)。
一方、ナ・リーグの最高勝率は、メッツの8割(12勝3敗)。
両者に共通するのは、若い新監督を迎えたことだ。レッドソックスはアレックス・コーラ('75年10月生まれ)。メッツはミッキー・キャラウェイ('75年5月生まれ)。
野茂の後ろで守っていたコーラが……。
ふたりとも、イチローより2歳若い。コーラは21世紀の初頭、野茂英雄のうしろでセカンドやショートを守っていたからご記憶の方も多いと思う。2011年を限りに現役を退き、野球解説者を経て'17年にはアストロズのベンチコーチを務めた。戦略眼の高さには定評があったが、監督は初めての経験だ。
キャラウェイの経歴はもっと地味だ。大リーグの投手としては、5年間で4勝11敗。1999年から2004年までの間に(途中で空白がある)3球団を渡り歩き、2005年から2007年までは韓国の現代ユニコーンズで投げていた。3年間の通算成績は32勝22敗。
指導者としての手腕を発揮したのは、2013年にインディアンスの投手コーチに就任してからだった。
最大の功績は、あのコーリー・クルーバーを育て上げたことだが、'14年から'17年までの4年つづけて、インディアンスはリーグ最多の奪三振を記録している。メッツは、この実績に眼をつけたのだろう。なにしろこのチームには、ノア・シンダーガード、ジェイコブ・デグロム、マット・ハーヴィという逸材がそろっている。彼らが持っている能力をフル稼働させれば、メッツは確実に化けるはずだ。