マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
高3・大谷翔平のボールを受けた日。
「超高速変化球投手」という新種。
posted2018/04/13 07:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Kyodo News
大谷翔平は「変化球投手」だと言ったら、きっと多くの人から、バカ言ってんじゃないよ! とお叱りをいただくことだろう。
大谷翔平の日本ハムでの5年間のピッチングを思い出すと、確かに、150キロ以上の快速球のスピード感と、打者のヘッドアップを誘うのに十分な角度が真っ先に記憶に現れる一方で、スライダー、フォークのすばらしさが鮮烈な記憶として残っている。
高校時代の大谷翔平の「全力投球」を受けたことがある。
最初は、彼が3年春のセンバツに出場する直前の3月。しかし、この時の彼は股関節を痛めていて、歩くのも辛いような体調だったので、始めることは投げ始めてくれたのだが、とても「ピッチング」という状態じゃないと判断。
「体調が良くなったら、またお願いします」と“痛み分け”になっていた。
それでも、上体だけで投げ下ろしてくる速球は、室内ブルペンの凍えるような冷気を切り裂いて、ホップするように、構えるミットをパシン! と叩いてきたものだ。
大谷の150キロ直球を受けた高3秋。
“再会”は夏が終わって、3年の秋になった。
すでに現役を上がって、岩手県予選決勝での「疑惑のレフトポール弾」のショックもだいぶ癒えた頃だろう……と、“2度目”を申し込んだ。
すごい球投げてますよ、翔平、だいじょうぶですか?
佐々木洋監督から様子は聞いていたし、なんといってもノンプレッシャーの「3年秋」だ。
心も軽いし、肩なんかもっと軽く、きっとガンガン腕振ってくるんだろうな……予想したとおりの快速球が、ビュンビュン投じられた。
そりゃあ、とんでもなく速かった。
ミットに構えて、マウンドで大谷翔平が動き始めたら、もうまばたきだってしていられない。
18.44メートル先で彼が腕を振り抜いた瞬間、こっちが構えるミットに、もう白球が叩きつけられている。
コーチの方がスピードガンで計ってくれた。
出ていても、147、8キロだと思ったら、153とか154が出ていて驚いた。
私自身に150キロ台が捕球できるなんて、思ってもみなかったからだ。