沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
ラスト3ハロン33秒2という“異常値”。
アーモンドアイが桜花賞でまず1冠。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2018/04/09 11:30
ラッキーライラックの走りに目立つミスがあったわけではない。ただただアーモンドアイが強かった。
この末脚は、まだマックスではない。
勝ちタイム以上に驚異的だったのは、ラスト3ハロンの速さだ。
この馬が繰り出した33秒2は、2番目に速かった馬より1秒も速かった。それも、完璧な走りによって出したタイムではなかった。直線に向いてから、リプレイ映像で確認できただけでも、6回ほど手前を替えていた。
手前をたびたび替えるのは、苦しいときか、逆に、全力を出していないときだ。この馬の場合は、まだまだ余力があるように見えた。マックスの走りをしたらどれだけ切れるのかと思うと、恐ろしいくらいだ。
ラッキーライラックの石橋脩は「イメージどおりのレースができた。追い出しを我慢したのですが、一瞬にかわされた。勝ち馬が強かったです」と悔しそうだった。
3着はリリーノーブル。騎乗した川田将雅も「ラッキーライラックとの差は詰まりましたが、前にもう1頭強い馬がいましたね」と勝者を讃えた。
可愛らしい顔にそぐわぬ破壊力。
8頭出ていたノーザンファームの生産馬が1~3着を独占した。
ともに世界を驚かせたロードカナロアとオルフェーヴルという新種牡馬の産駒のワンツーフィニッシュだったのだが、アーモンドアイの強さばかりが目立った。「世界のロードカナロア」がスプリントGIで見せた末脚をここで繰り出した、と言っても大げさではないほどのパフォーマンスだった。
なお、ロードカナロアにとっては、これが産駒によるGI初制覇であった。
アーモンドアイは「美人とされる顔の目の形」という意味だ。馬名のとおりの可愛らしい顔からは想像もつかないような、凄まじい破壊力を見せた。
桜花賞で、勝ち馬がこれほどの衝撃をファンや他馬陣営に与えたのは、2着を8馬身突き放した1987年のマックスビューティ以来ではないか。61年ぶりの完全女王誕生はならなかったが、31年ぶりのインパクトを、私たちは感じることができたと言えよう。
次走はオークスで、陣営はアパパネ同様、牝馬三冠を目標にしていくようだ。
「長い距離でもイケるし、オークスも勝てると思う。トリプルクラウン(三冠)を考えることもできる」とルメール。