“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
ヴィッセルの大型新人・郷家友太。
高校生が「プロ意識」を掴むまで。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2018/04/08 08:00
攻守ともにルーキーらしからぬ活躍を見せている郷家。あとはゴールを決めるだけだ!
那須「若いうちは自分のことだけに集中しろ」
積極的に教えを乞い、かつ理解しよう、理解してもらいたいというその姿勢は、すぐに先輩達に伝わった。彼は、特定の選手だけではなく、いろんな選手と熱いサッカー談義を交わし続けたのだという。
「今は気軽に話しかけてくれたり、ご飯に誘ってくれるようになりましたし。中でも一番歳上の那須大亮さんからは物凄く心に響く言葉をもらえたんです。
『俺らみたいな歳になるとチームのことを気にしないといけないけど、若いうちはチームのこととか気にしないで、自分のことだけに集中しろ。自分が好きなプレーをして、どんどんアピールをしていけ』という言葉をもらって、本当に心が軽くなった気がしました」
こんな地道なピッチ外での努力もまた、彼が早くに出番を掴んだ要因の1つだったはずだ。
ルヴァンカップデビューのV・ファーレン長崎戦でのこと。試合前のストレッチで、那須が郷家にこう声を掛けてきた。
「誰しもデビュー戦は絶対に緊張するんだから、緊張していることを気にするなよ。いつもと同じプレーをしろと言われても無理だし、36歳の俺でも緊張するんだから」
この言葉に背中を押された郷家は、その試合で存分に躍動感溢れるプレーを見せつけた。
その後のセレッソ戦でも、吉田監督も納得の見事なプレーを披露した。
「セレッソ戦はJ1デビューだし、ルヴァンとは比べ物にならないくらい緊張しました。相手も人気クラブのセレッソで、“阪神ダービー”というのもあって、観客も満席に近くて……。いざピッチに立ってやってみたらサポーターが凄く応援してくれて、お客さんも沢山いる中で満席に近い中でやって緊張したけど、那須さんの言葉を思い返して臨んだら落ち着いてプレーできました」
「たった2試合でここまでの感情の落差を……」
そして冒頭で触れた柏戦。
試合はチーム全体のパフォーマンスが低調で、1-2の敗戦となってしまった。当然、試合後の彼の表情は沈んでいた。
「2試合連続でスタメンで使ってもらって期待に応えたかったんですが……。
セレッソ戦の後は物凄く気持ちよかった。でも、今日は本当に落ち込んでしまうような出来で。やっぱりプロは1試合1試合の重みが違いますね。たった2試合でここまでの感情の落差を感じたことは今まで無かったので……」