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大阪桐蔭の二刀流・根尾昂に尋ねた。
「注目されること、どう思う?」
posted2018/04/07 11:30
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Kyodo News
史上3校目のセンバツ連覇の瞬間、決勝の舞台で完投し、本来、甲子園球場の中心にいるはずの根尾昂の姿がなかった。
最後の打者をファーストゴロに仕留めた際、ベースカバーに入ったため、必然的に歓喜の輪に入り損ねたのである。
それでも根尾は、感情を爆発させていた。
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ウイニングボールを掴んだグラブを高々と掲げる。勢いよくベースカバーに入ったことで帽子が飛び、グラウンドに落ちた。それを拾って根尾に手渡した、智辯和歌山のファーストベースコーチ・田中勇也が、「素の根尾」に触れたという。
「根尾は最後まですごかったんで、僕も無意識に帽子を拾っていましたね。スポーツマンシップが出たというか。それで、根尾に『ナイスピッチング!』って言って帽子を渡したら、『ありがとう、ありがとう!』って僕の肩を叩きながら何度も言っていました」
智辯和歌山との決勝戦。センバツ史上36年ぶりの連覇を託されたのは、背番号「6」の根尾だった。4回2死二、三塁から「失投でした」と適時打を許し2点を先行されたものの、失点はこれだけ。140球の完投と、チームに連覇をもたらした。
お立ち台では、すでにいつもの根尾だった。
試合後のお立ち台。インタビュアーが「2年連続での優勝投手は史上初です!」と鼻息を荒くしマイクを向ける。だがこの時はもう、いつもの根尾だった。つとめて冷静に、自身の投球をこう振り返った。
「自分の後ろにエースの柿木(蓮)が控えていたので、全力でいけました。素晴らしいところでいい経験ができました」
投手として、決勝を含め3試合に登板し2完投。26回を投げ26奪三振、防御率1.04と高い能力を見せた。打者としても全試合で5番を担い、18打数9安打の打率5割、8打点と圧巻の打棒を披露。「二刀流」として話題を集める根尾は、周囲の期待に満点で応えた。
「最強世代」と言われた大阪桐蔭において、根尾はチームの象徴だった。
そして、このセンバツは下馬評通り大阪桐蔭の大会だったし、根尾の大会でもあった。