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イチローマニアを生粋の2番打者に!
上林誠知に工藤監督、王会長が期待。 

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田尻耕太郎

田尻耕太郎Kotaro Tajiri

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photograph byKyodo News

posted2018/03/28 11:00

イチローマニアを生粋の2番打者に!上林誠知に工藤監督、王会長が期待。<Number Web> photograph by Kyodo News

昨季レギュラーをつかみ、134試合の出場で打率.260、本塁打13、打点51を記録。6番、7番、8番での出場が主だった。

真面目だからこそ敢えて打席で制約を。

 一方で藤本博史打撃コーチが「将来的に2番かというと違うと思う」と話すように、工藤監督もしっかりとした狙いがあるようだった。

「2番として様々な役割を考えながらバッティングをすることで、彼の成長に繋がったり、いろんな意味でプラスに働くことがあるのではないかと考えています」

 上林は真面目で考え込んでしまう性格。ならば、敢えて打席で制約を持たせることで逆に集中出来るかもしれないし、目的意識を持った中でバッティングをすることでいい感覚を取り戻していくかもしれない。そんな狙いが見え隠れした。

 また、上林に大きな期待をかける人物がもう1人。それは王貞治球団会長だ。

 現職になってから試合はいつも観戦するが、練習中のグラウンドに出てくる機会はかなり珍しくなった。しかし、22日の全体練習日にはジャケット姿で現れるとマンツーマンで熱血指導。その後も試合前練習にも毎日顔を出した。24日のデーゲームも、前日のナイターをしっかり観戦したうえで午前10時前にはグラウンドに姿を見せた。

「この世界は常に変化しないと」(王会長)

 その日、久々に王会長に話を聞く機会があり、上林のことを訊ねると熱のこもった口調で言葉が返ってきた。

「もっとやれると思うんですよ。ただ選手ってのは、本人は意外と気づかない。周りがその気にさせてあげるのも大切なんです。また、今は壁にぶち当たっているかもしれないけど、逃げちゃダメなんですよ。それはたとえ調子が良かったり結果を残したりしている時も同じだけど、この世界は常に変化をしなきゃいけない。壁に自分からどんどんぶつかっていって前進しなきゃ。

 その壁が少しずつ崩れていって、いつかぶち破れるんです。いつの間にかぶち破っているんですよ。私もそうでした。それがどのタイミングだったのか、振り返っても自分では分からなかった。ただ、とにかく常に前へ、そして変化をという気持ちでやることが大切なんですよ」

 オープン戦のホークスは、5勝10敗1分と珍しい大不振。オープン戦負け越しは12年ぶり。また、途中で8連敗を喫したが、これは南海時代の1969年に10連敗を喫して以来49年ぶりだった。

 それでも優勝候補の一角であることを疑う声は少ないが、レギュラークラスに怪我人が出た時の脆さを露呈したオープン戦ではあった。若手の台頭は必須。上林も昨年並の成績では、チームとしてはかなり痛い。この新打順がペナントの行方をどのように左右するのか。シーズン序盤の大きな見所になる。

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