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四国ILから西武入団をつかんだ19歳。
伊藤翔が開幕一軍も夢じゃない理由。
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byKyodo News
posted2018/03/21 11:00
オープン戦ではここまで安定した数字を残してきた伊藤。開幕一軍入りへ気を引き締め直す。
徳島で球速が10キロ近くアップ。
高校卒業時にはドラフト指名を待ったが、残念ながら伊藤に声をかける球団はなかった。大学進学も考えたものの「4年間待つより、1年でも早くプロに行きたい」と徳島に入団し、最短距離でのNPB入りを目指したと語る。
しかし、その独立リーグ入りが伊藤の成長につながった。高校時代、140キロ前半だったストレートの球速が、10キロ近くアップしたのだ。リーグ戦で実戦登板を繰り返すうちに体が鍛えられ、その成果は投げるボールに顕著に表れた。
伊藤は当時を振り返る。
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「前期の途中、急に頻繁に爪が割れるようになったんです。もともと爪が弱いので、手入れもして、気にはかけていたんですけど、割れる間隔がどんどん短くなっていきました。ただ、それは自分にとってはいい傾向なんです。それに独立リーグの所属チームは4球団なので、同じ打者と対戦することが多いんですが、対戦するうちに、徐々に同じバッターの反応が違ってきた。打者の反応を見て、自分のボールのスピードが上がっていることに気づきました」
割れた人差し指と中指の爪を見て、自分の成長を実感した。指にボールが引っかかる感覚も強くなっていた。念願のプロ入りに向けて、一歩ずつ進んでいる手応えがあった。
独立リーグで磨かれた反骨心と探究心。
「よく、周りの人から“投げっぷりがいい”と評価してもらえるので、自分でもプロの世界ではそこをアピールしていきたいと思っています。自信があるのはスライダー。オープン戦ではスライダーで三振も取れたし、カウントも取れました。ただ、いちばん自信を持っているボールなんですが、“どうしたらもっとバッターが嫌がるか”とか“どうしたらもっと簡単に空振りが取れるか”と研究を続けたいです」
独立リーグでの毎日は、体だけではなく伊藤の反骨心も育てた。
「僕が高校を卒業した年は、高卒ドラフト1位で指名される選手が多くて、見ていて悔しい思いをしました。プロに進んでいく同級生を見て“早く追いつきたい、同じ舞台に立ちたい”という思いだけで野球をしてきました」