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四国ILから西武入団をつかんだ19歳。
伊藤翔が開幕一軍も夢じゃない理由。
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byKyodo News
posted2018/03/21 11:00
オープン戦ではここまで安定した数字を残してきた伊藤。開幕一軍入りへ気を引き締め直す。
中学時代に対戦した楽天・藤平の存在。
高卒1年目から一軍で8試合に登板した東北楽天イーグルス、藤平尚真のピッチングには特に刺激を受けた。同じ千葉出身。中学時代にはシニアリーグで対戦した経験もある。
「中学生のときから千葉県内では有名なピッチャーで、プロ入り1年目から活躍しているのを見て、“藤平だったらやるだろうな”と思って見ていました。僕の高校はそれほど強い高校ではなかったので、横浜高校と試合をしたのは一度だけですが、中学のときもスバ抜けていい投手だったんですけど、有名な高校に進んで、さらにすごいピッチャーになっていました」
同級生の活躍が眩しくもあり、悔しくもあった。
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「追いつきたい、追い抜きたいという思いでやってきて、やっと同じ舞台に立てました」
とはいえまだ19歳、もちろん課題もある。
3月14日、中日戦では伊藤のセールスポイントである「打者に立ち向かう姿勢」が影を潜めた。先発の菊池雄星が頸部の違和感で緊急降板。2回の頭からマウンドに上がった伊藤は平田良介にレフト前ヒットを許すと、続く松井佑介にデッドボールを与える。バントでランナーを進められたあと荒木雅博のタイムリーヒットでプロ入り初めての失点を喫した。
「最短でプロに来られてよかった」
その試合の話題になると伊藤は肩を落として言う。
「言い訳になってしまうんですけど、まさか雄星さんが1回でマウンドを降りるとは思っていなかった……。準備をしていなかった自分の甘さが原因だと思います。シーズン中、ピッチャーは打球が当たることもあるし、何が起こるかわからない。改めて、そういうことも想定してブルペンにいなければいけないと学びました」
それでも、「シーズンが始まる前にこういう経験ができたのは大きかった」と気持ちを切り替え、前を向く。
「とにかくこうして一軍の打者と対戦できるのはすごく良い経験です。1試合、1試合すごく勉強になる。改めて、独立リーグ入りを選んで、こうして最短でプロに来ることができてよかったと思っています」
開幕一軍も視野に入ってくる時期だが、「今は考えていないです」と即答する。
「とにかく今はオープン戦で結果を残すことだけを考えています。1試合1試合が勝負ですから」
思い焦がれた舞台を目指し、まずは生き残りをかけて残りのオープン戦に臨む。