炎の一筆入魂BACK NUMBER
広島カープ、背番号「0」の系譜。
上本崇司が極める“切り札”の野球道。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKyodo News
posted2018/03/17 11:30
9月6日の阪神戦。連覇へと繋がるワンプレーとなった上本の二盗。
上本のワンプレーが連覇を手繰り寄せた!
そのワンプレーが昨季、連覇へラストスパートをかけた。
2位阪神との直接対決となった9月6日。同点の延長11回裏に、途中から出場した上本は1死走者なしから四球を選ぶと、會澤の打席でスタートを切った。
試合展開、状況などから考えると、誰もが「走る」と予想できた場面。しかも出場は8月11日巨人戦(マツダ)以来、約1カ月ぶりだった。
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それでもスタートを切り、そして成功させた。
「2ストライクまでに走れず、やばいなと思っていた。変化球が来るという確信があったので行った」
阪神バッテリーの警戒網を潜り抜け、直後に歓喜をもたらした。
選手選びは、パズルのようなものだ。
廣瀬純外野守備走塁コーチは「実戦に入ってからが大変だからと本人には言っている」と新たな課題に直面することも想定しているが、外野守備にはめどが立った。
脚力を生かした守備範囲は広く、打力を売りとする選手の代わりは十分務まるに違いない。
一軍登録枠の28人からベンチ入りは25人。
レギュラー格ばかりではいけないし、タイプに片寄りがあってもいけない。
選手選びは、パズルのようなものだ。
バランスとバリエーションによって、采配の幅は広がる。選手個々の足し算ではなく、かけ算でチーム力は変わってくる。
代走と内野の守備固め、そして外野の守備固めもこなせる「25分の1」はなかなかいない。両打ちで小技も利く。開幕一軍枠を巡る争いは続いているが、上本には早くも当確ランプがともったと言ってもいい。
上本は今年、球団カレンダーやカープロードに掲げられた選手紹介ボードに初めて登場した。存在感や期待が大きくなっている表れだろう。12球団屈指の選手層を誇る広島で、欠かせぬ1ピースとなりつつある。
背番号「0」の宿命とともに、1度は見失いかけた進むべき道を力強く、そして真っすぐに突き進んでいる。