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僕らが今も本田圭佑に期待する理由。
傍目には幸運でも、本人は「想定内」。
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph byKyodo News
posted2018/03/15 11:40
2010年南アW杯、ワントップコンバートに応えて本田圭佑はゴールを決めた。「持ってる」男の真骨頂だった。
手のひら返しと言われるのは承知で。
当時の日本代表は、現在のハリルジャパンとは比較にならないほどの逆風にさらされていた。'10年2月の東アジア選手権でも、'10年5月の壮行試合でも韓国に惨敗し、批判の集中砲火を浴びた岡田武史監督は、進退伺いまで出した。
スイスでの事前キャンプでも、チームの調子は上がらず。多くのメディアがW杯本番での「3戦全敗」を予想し、当時『週刊サッカーマガジン』の日本代表担当記者だった筆者も、何度もネガティブな記事を書いた。
そんな中で迎えた一戦で、本田のゴールを守りきり、見事に岡田ジャパンはカメルーンを破った。
手のひら返し。こう言われるのは重々承知の上で、日本の堅守と“救世主”本田を讃える記事を書こうと思った。
締め切りは、試合終了30分後。記者席から日本の編集部へ、原稿の方向性を伝えるために電話すると、編集長からこう返された。
「当たり前だ。守備的なサッカーであろうとなんだろうと、W杯では勝ったチームが強いんだ」
兄・弘幸は「すごい幸運」。
あのカメルーン戦でのゴールについて、今回の特集内で本田圭佑の兄・弘幸氏はこう語っている。
「あれはトラップミスがパ、パンって右足に当たって左足の前に転がっている。すごい幸運ですよね。昔からそういうところがあった。気持ちで運を引き寄せるというか」
確かに映像を見返すと、本田の左足トラップは、足の向きとは逆に右方向へバウンドし、右膝に当たって絶好の位置に転がっている。この不規則なバウンドに混乱したか、カメルーンのGKハミドゥは、本来右側に倒れ込みながら止めに行くべきところで、左に倒れている。