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僕らが今も本田圭佑に期待する理由。
傍目には幸運でも、本人は「想定内」。
posted2018/03/15 11:40
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph by
Kyodo News
――本田圭佑さま。Number編集長の松井一晃です。現在、本田選手についての特集を制作しています。小誌の読者と日本のサッカーファンのために、この場でどうしても質問させてください。本田圭佑にとって、サッカー日本代表とは何ですか。ロシアW杯では何を目指していますか。
「はは。凄いところから取材してきますね。笑 ロシアW杯での抱負も話したい気持ちはあるんですけど、選ばれるかどうかまだ全く見えないんでね」
――でも、今のパフォーマンスならば、自分は代表にふさわしい選手だと思っていますよね?
「今のパフォーマンスじゃなくても思ってましたよ」
これは本誌編集部と本田圭佑との間で交わされた、Twitter上でのやり取りである。Number948号の特集タイトルは、「僕らは本田圭佑を待っている」。文字どおり、ロシアW杯へ向けて、本田の日本代表での存在価値を再検証し、エールを送る企画である。
特集のページを作りながら、ずっと考えていた。なぜ自分は、今でも本田圭佑に期待してしまうんだろう、と。31歳になり、昨年11月の日本代表欧州遠征のメンバーからも外れている。それでも、ロシアの地で金髪の背番号4が、日本を救うゴールを決めるんじゃないかと、想像してしまう。
南アフリカ初戦の、あのシーン。
勝手な結論。やっぱり2010年6月14日、ブルームフォンテーンのマンガウングスタジアムで、あの光景を見たからだと思う。カメルーンとの南アフリカW杯初戦、39分のことだ。
中盤の遠藤保仁から、右サイドに開いた松井大輔へパスが通る。
おっ。記者席でぎゅっとペンを握り締めた。
松井大輔、右足でクロスを送ると見せかけて、切り返し。
おおっ! 記者席で、ちょっと声が出てしまった。
松井大輔、左足でクロス。ファーサイドの本田圭佑が、どフリー。
おおおっ! サッカーの取材者となってから初めて、思わず記者席の椅子から立ち上がってしまった。
本田圭佑、なんとかボールを足元に収め、左足でゴールに押し込んだ。
うおおおお! 気がついたら、記者席の隣席で同じく立ち上がっていた初対面のおじさんと、抱き合っていた(後に名刺交換をしたら、某新聞社のヨハネスブルク支局の方でした)。