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本田圭佑も雇う「専属戦術分析官」。
Jリーガーが活用する助言の中身。
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byYoichi Igawa
posted2018/03/14 17:00
マルティノスのサポートをするフリーリンク氏。戦術も個々が把握する時代になっている証しだろう。
最初は「元プロでもないのに……」。
フリーリンク氏は元々、バスケットボールのセミプロ選手だったという。このプロジェクトを思い立つと、バルセロナにあるフットボールのパフォーマンス向上に特化したクラスに数カ月通った。
その後、データ分析に定評のあるレスター・シティで、彼らがどのようにビデオを分析に用いているのかを見聞きし、2016年1月に会社を立ち上げ、ホームページを用意して顧客を探した。
いささか大胆にも聞こえる挑戦の始まりは、やはりというべきか、苦難の連続だったと26歳のアナリストは打ち明ける。
「まず、誰も自分のことを知らなかったから、訝しがられたよ。『あなたは何者?』とか、『元プロ選手でもないのに、何がわかるんだ』といった反応がほとんどだった。それでも選手やエージェントにコンタクトを取り続け、辛抱強く誰かが興味を示してくれるのを待った。
初めて分析したのは、あまり知られていないふたりの選手だった。彼らには無料でサービスを提供したよ。実績を作る意味もあったからね。その後、レロイ・フェル(スウォンジー)の兄弟から連絡があり、プレゼンテーションをしたら、面白いじゃないかと言ってくれたんだ」
フェルの結果で、代表選手が顧客に。
オランダ代表で11試合に出場した経験を持つプレミアリーガーは、彼らにとって初の「ビッグプレーヤー」だった。試合映像を細かくクリップし、綿密に分析した上でアドバイスを送ると、フェルはすぐに気に入った。
そして正式に契約を結ぶと、このセントラルMFは目に見える結果を連発(昨季プレミア開幕から7試合で4得点)。個人アナリストの存在が国内のメディアで取り上げられたことも手伝い、彼の存在はオランダで急速に広まり、今では複数の代表選手を顧客に持つようになった。