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ヴェルディ2年目のロティーナ哲学。
栄光のユース10番・藤本寛也を抜擢。
text by
海江田哲朗Tetsuro Kaieda
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2018/03/09 10:30
中島翔哉、安西幸輝ら東京Vを経て飛躍した選手は数多い。藤本寛也にはどのようなサッカー人生が待ち受けるか。
リーグ戦は「42本のマッチスプリント」。
長丁場のリーグ戦はよくマラソンに喩えられるが、この捉え方も違うようだ。昨季、水戸ホーリーホックで14得点をマークし、9年ぶりに帰還したストライカー、林陵平はこう語る。
「ロティーナさんは、僕らに向かってはっきりと言いました。持久走ではなく、短距離走だと。42本のマッチスプリント」
アトレティコ・マドリーを率いるディエゴ・シメオネ監督が好んで用いる言葉に「パルティード・ア・パルティード」という常套句がある。スペイン語で、一戦一戦。ロティーナ監督の行動規範や思想もまた、これに近いものだろう。
幕を開けた2018シーズン、東京Vはジェフユナイテッド千葉との開幕戦で2‐1と勝利し、次節、降格組のひとつであるヴァンフォーレ甲府とはスコアレスドロー。まずまずのスタートを切っている。
メンバー選考に年齢や身分証明書はいらない。
驚かされたのは、東京Vユース出身のルーキーである藤本寛也の先発起用だ。各年代の日本代表に選出されてきたレフティで、展開力や急所を突くスルーパスを武器とする。千葉戦では局面を一変させる縦パスを通し、相手を退場に追い込む活躍を見せた。
ロティーナ監督は、藤本を開幕戦のピッチに立たせた理由を次のように話す。
「寛也はボールポゼッションに継続性を与えられ、味方と連係するプレーができ、精度の高いラストパスも出せる。チームのプレーモデルに合致した選手という理由で、スタメン起用しました。私はメンバーを選ぶにあたって、年齢や身分証明書を見ません。勝つために決断していきます」
東京Vユースの10番の系譜を継ぐ者。現在チームにいる、澤井直人、井上潮音、渡辺皓太に続き、新たに藤本が加わってきた。
澤井はスペースに入り込む動きを得意とし、井上は攻撃を組み立てる構成力、俊敏性と身体の強さを兼ね備える渡辺は攻守に貢献できると、それぞれ特色が異なるのがユニークだ。澤井は10番を背負う条件について「ほかの選手との違いを見せ、チームを勝たせる選手であること」と断言している。