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平昌のライバル対決を見て思い出す。
シンクロ井村雅代HC「敵を愛せよ」。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byNaoya Sanuki/JMPA
posted2018/03/05 07:00
肋骨の骨折を抱えながら、ノーマルヒルでフレンツェルと接戦を繰り広げた渡部。4.8秒差で惜しくも銀となった。
井上康生も相手へのリスペクトを。
井村氏の言葉は、柔道男子・井上康生監督とも相通じる。
井上氏は、現役時代にこう話している。
「柔道は対戦する相手がいなければ試合になりません。そして相手が強ければ強いほど、もっと自分も上を目指そうと考えられるし、努力できる。だからそういう選手がいることには感謝しかありません」
フィギュアスケート男子もまた、印象的だった。
銀メダルを獲得した宇野昌磨の言葉だ。
「僕にとって、羽生(結弦)選手は最大の目標であって憧れであって、日本一になるのは世界一難しいと昔から考えていました。いつまでも追い続けたいと思っています」
そして羽生自身も、フィギュアスケートを引き上げたことへの思いを尋ねられたとき、いやいや、と首を振って答えた。
「いちばん最初に4回転ルッツの戸を開いたのはボーヤン(・ジン)だし、それからなんとか僕も限界を超えようと思って、彼を追いかけていただけです。そうしているうちにみんなも強くなって、ネイサン(・チェン)という選手が出てきて、そして宇野選手という日本の素晴らしい選手が出てきました。僕は時代に恵まれたスケーターだなと思っています」
自分を高めるようと思える相手がいることへの感謝と敬意。
平昌五輪は、そんな思いを抱きつつ努力を重ねてきた選手たちによる、まさに4年に一度の大舞台であった。
各メダリストが臨んだ決戦を、写真とともに振り返ったNumber947号『完全保存版 平昌五輪 2018総集編 17日間の神話』でぜひお楽しみください!