球道雑記BACK NUMBER
メジャー挑戦を断念して――。
涌井秀章は今季、何を目指すのか?
posted2018/03/02 16:30
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph by
Kyodo News
埼玉西武で10年、千葉ロッテで4年、主にトレーニングコーチとしてチームに携わってきた大迫幸一が、千葉県館山市に「館山フィットネスセンター ゴルフ&ベースボールアカデミー」を立ち上げたのは昨年春のことだった。
「この時期(初春)にしては随分暖かいでしょう? 南郷(埼玉西武のキャンプ地)にも気候が似ていると思ってね。ここで何かをしようと思ったんだよ」(大迫)
冬は暖かく、夏は涼しい海洋性気候の千葉県館山市は、合宿のメッカとしてもよく知られている。大迫も2009年の初陽、当時、埼玉西武に籍をおいていた千葉ロッテ・涌井秀章の自主トレの地としてこの場所を選び、以降10年間続けている。
「すぐにここが気に入りましたよ。食べ物もおいしいし、街の人たちも温かい。今度取材じゃないときに、また遊びに来てくださいよ」
付き合いの深さに関係なく、相手の懐にすっと入って来る。そんな気さくな性格の大迫だからこそ周囲に人が集まって来る。
トレーニングコーチ時代には、選手との距離感をなくすため、あえて「コーチと呼ばなくていいから」と話し「大迫さん」と呼ばせた。そんな彼のもとには今年も涌井を筆頭に、千葉ロッテの内竜也、益田直也、埼玉西武の炭谷銀仁朗、東京ヤクルトの原樹理らが集まって自主トレを行った。
涌井が「オヤジ」と呼んで慕う。
「近年は色んなトレーニングがありますけど、私の自主トレは基本走ることがメインです。もちろん私も一緒になって走りますし、選手と共に走れなくなったら、そこで終わり。そう決めていますから……。だから、あと何年もないですよ」
そう、己の信念を話す大迫。
しかし次の瞬間、「なーんてね」と切り返し、せっかくの良い話を、冗談で笑い飛ばしてしまう掴みどころがない人物でもある。
自らの性格を「天邪鬼」と称する涌井ともそれは気が合うはずで、涌井もそんな大迫を「オヤジ」と親しみを込めて呼び慕っている。