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寺原隼人が17年目のシーズンへ。
直球に求めるのは速さより“動き”。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byHideki Sugiyama
posted2018/02/28 07:00
高卒1年目となる'02年は14試合を投げ6勝2敗1セーブ、防御率3.59。最速157kmの豪腕で寺原フィーバーを巻き起こした。
能力ほどに成績はついてこなくても。
ドライチ入団ながら5年目オフにベイスターズへトレードされた。新天地1年目にプロ入り初の2桁勝利を挙げ、守護神を務めたシーズンもあった。それでも9年目のオフに今度はバファローズに再度トレード。'11年目が終わった'13年、国内FA権を行使してホークスへと復帰した。
この春、17年目のシーズンを戦う準備を、地元宮崎で重ねてきた。
通算71勝80敗23セーブ。2桁勝利を挙げたのは2度。持っている能力の高さからすれば、もしかしたら、彼の南国気質な優しさが仇となった部分があったのかもしれない。それでも群雄割拠のプロ野球でここまで生き残ってきた。
今年10月には35歳になる。150km級の剛速球はまだまだ投げることができる。
しかし、寺原は笑ってさらりと言いきる。
「そこに喜びは感じないですね」
妙な重圧とは戦わない。年齢と経験を重ねて心の芯は間違いなく強くなった。いい意味でマイペースである。
「僕のストレートは動く」
2月22日、今春のキャンプで3度目の紅白戦が行われた。白組の先発は東浜巨、そして寺原は紅組の先発でマウンドに上がった。前の登板は中継ぎで2回1安打無失点。起用の変化は、「先発の一員としても考えている」という首脳陣からのメッセージが込められていた。
寺原としては'15年に8勝を挙げて以来のチャンス到来である。果たして、どんなピッチングを見せるのか。力んでしまうのか。
いや、やはり寺原は、寺原だ。いつも通り淡々としたリズムで右腕を振り抜く。初回はセカンドゴロとピッチャーゴロが2つ。2回、先頭の柳田悠岐もセカンドゴロ。勝負球は全てストレートだった。
「僕のストレートは動く。自分でも曲がるかスッと落ちるか分からない。自分の持ち味だと思うのでプラスに考えたい」
グラウンドボールピッチャーだと自覚している。剛速球でバッタバッタと三振を狙う欲望など微塵もない。