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葛西紀明「2022年、絶対に出ます」。
世代交代と何度も言われたからこそ。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byRyosuke Menju/JMPA
posted2018/02/20 11:40
6位に終わったラージヒル団体決勝後、葛西紀明は「4年後の北京オリンピックで絶対メダルを取りたい」と決意を語った。
レジェンドと世代交代の議論。
近年こそ「レジェンド」として国内でも称えられるようになった葛西だが、かつて、何度も世代交代をめぐる議論の対象にされたことがある。
2002年のソルトレイクシティ五輪で、日本ジャンプ陣が好成績をあげられなかったあと、若い選手を育てなければならないという声が出るようになった。
そして2006年のトリノ五輪、日本のメダル獲得はフィギュアスケートの荒川静香の金1つのみに終わった。ジャンプをはじめ、各競技でベテラン選手が多いことが指摘された。
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「(オリンピックに)2回出てもメドが立たないなら、3回目は出さないとか、若い選手に経験を積ませるのはどうか」
トリノ五輪ののちに開かれた日本オリンピック委員会の会議の席上で、出席した首相経験者がそう主張したと報じる記事もあった。
世代交代の対象に、葛西も含まれていた。
「合宿で頑張って認めさせよう」
それだけではない。海外から日本代表ヘッドコーチを招いたとき、そのコーチはベテランを軽視するスタンスをとった。
「合宿で頑張って、認めさせようと思いましたね」
その当時を葛西はこう語っている。もうだめだろう。そんな見方を何度もされてきた。だが、葛西自身は周囲にどう思われても、ひるまなかった。その理由を尋ねたとき、こう答えた。
「自分を信じていますから」
シンプルではあっても、力強かった。何よりも、彼の足跡がその言葉をただの言葉で終わらせていなかった。