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MLBで日本人初の女性トレーナーに。
父は2000本安打、谷沢順子の挑戦。
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byAyako Oikawa
posted2018/02/21 08:00
メジャーリーガーにとって体は、数億円の年俸を稼ぐためのまさに宝。それを任せられるトレーナーの責任も重い。
父は元ドラゴンズの谷沢健一氏。
アスレチックトレーナーを志したときから、心に決めていた。将来は絶対にメジャーリーグで働く、と。
野球選手だった谷沢健一氏を父に持ち、幼い頃から野球のある環境で育ってきた。中日ドラゴンズの主砲だった父親が怪我で苦しみ、様々な治療法を試みるのも目にしてきた。治療やリハビリによって選手寿命やパフォーマンスが変わってくる。だから、選手の手助けをするアスレチックトレーナーになりたい、ずっとそう思ってきた。
日本で大学卒業後、その勉強をするために米国で大学院に入学。その後、米国の大学で働き始め、それとほぼ同時に、アメリカ陸上連盟で国際大会へ帯同するチームのアスレチックトレーナーとしても活動し始めた。2004年には、千葉国際駅伝で米国代表に帯同。その後も世界ジュニア(現U20)、世界陸上、五輪など、数々の国際舞台でアメリカ代表をサポートしてきた。また昨年は、ワールドベースボールクラシック(以下WBC)でアメリカ代表チームのアスレチックトレーナーとして働き、優勝に貢献している。
リオ五輪では、選手129人にスタッフ10人で対応。
陸上の国際大会において「1つでも多くのメダルを獲得する」を目標に掲げるアメリカ代表でのサポートは多忙を極めたが、中でもリオ五輪では、129人の選手に対して、アスレチックトレーナーは谷沢を含めて6人、そのほかマッサージセラピスト2人、カイロプラクター2人という人数で、早朝から深夜過ぎまで選手のケアを行った。
三段跳びで五輪連覇を果たしたクリスチャン・テイラーは「選手たちは彼らのことを限界まで酷使したと思う」と同情するほど過酷だった。
人生をかける大舞台に臨む選手たちは不安や焦りを口にし、時に自分勝手にわがままになる。休憩時間にも指名が入れば駆けつける。特に高い技術を持ち、選手に真正面から向き合う谷沢を頼る選手は多かった。
谷沢が野球の世界で働きたいと知っていた陸上選手たちは、ダイヤモンドバックスへの就職が決まったことを自分のことのように喜んだが、同時に「ジュンコがいなくなると淋しくなる」と話す。