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長洲未来、トリプルアクセル成功!
浅田真央の存在が人生観を変えた。
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byRyosuke Menju/JMPA
posted2018/02/20 11:00
10代の頃から期待された潜在能力が、ついに開花。長洲のトリプルアクセルには観客も喝采した。
「転ぶかなとドキドキした」けど。
'18年1月には、平昌五輪代表をかけた全米選手権で、ショート、フリーともにトリプルアクセルに挑み、どちらも認定された。総合2位で五輪代表に。いよいよ、8年越しの夢に挑むチャンスを得たのだ。
迷いはなかった。団体戦で、米国チームとして女子フリーにエントリー。『ミス・サイゴン』のプログラムで、アオザイに見立てた赤い衣装に身を包んだ長洲は、冒頭で力強くトリプルアクセルを踏み切った。きっちり3回転半まわりきって、パワーのある着氷。最高の「+3」をつけるジャッジもいるほどの、完ぺきなトリプルアクセルだった。
「ジャンプに入る前は緊張して、『転ぶかな』とドキドキもしました。でも助走でスピードを得て、そのままクリーンに降りました。もう嬉しい気持ちしかないです」
このトリプルアクセルで波に乗ると、「3回転+3回転」、「ダブルアクセル+3回転+2回転」と、すべてのジャンプを着氷し、6種類の3回転すべてを成功させる快挙で、自己ベストの137.53点をマークした。
「尊敬に値するトリプルアクセル」
この演技に感銘をうけた伊藤は言う。
「もう尊敬に値するトリプルアクセルです。今の採点ルールでは『3回転+3回転』のほうがトリプルアクセルよりも得点が高く、女子にとってトリプルアクセルは試合で挑戦することが難しい時代になっています。それでも今のルールに合わせて、全てのジャンプをバランス良く入れて高得点を出せている。絶賛に値する演技でした。これまでの全ての努力の成果が出て、このオリンピックにピタッとパワーが集約されたのでしょうね。スケートを続けてきて本当に良かったね、と伝えたいです」
五輪での成功者は伊藤、浅田と日本人が続き、長洲も両親が日本人。なにかそこに秘訣はあるのか、と長洲に聞くと、こう答えた。
「やっぱり両親が日本人なので、いつも厳しく日本人らしく育てられたことが良かったのかな。お母さんは私に『未来ならもっと出来るよ、頑張りなさい』っていつも言います。私が『うるさい』って言うと、『お母さんの仕事はうるさいことだ』って返される。そんな愛があるんです。アメリカで暮らす小さな日本人家族だけど、お母さんたちが頑張ってるから、未来も頑張ろうと思ってきました」
アメリカ西海岸に住む「頑張る」3人の日系人。トリプルアクセルは日本の心と共に、世界へと羽ばたいた。
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