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長洲未来、トリプルアクセル成功!
浅田真央の存在が人生観を変えた。
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byRyosuke Menju/JMPA
posted2018/02/20 11:00
10代の頃から期待された潜在能力が、ついに開花。長洲のトリプルアクセルには観客も喝采した。
「高橋大輔選手の映像を見て……」
「『できない』と思ったことは一度もありませんでした。高橋大輔選手のトリプルアクセルの映像とかを見て、そこに自分を重ねて頭の中で映像化するんです。そして『私も出来る』と思って跳ぶ。そうやって毎日練習してきました」
'18年2月のオリンピックまで、残された試合は少ない。すると長洲は、'17年夏に日本で行われたアイスショー「ザ・アイス」に出演し、トリプルアクセルを跳び続けた。アイスショーだからといってエキシビションの曲で楽しく踊るのではなく、本番を想定し、試合用のプログラムに本気で挑む。
このショーを見ていた伊藤は言う。
「とにかく今季に絶対トリプルアクセルを決めてやる、という気合いを感じました。何度転んでも挑戦し続けて。これならシーズン中には成功させるだろうという、しっかりとした計画を感じさせてくれました」
迎えたシーズン初戦のUSクラシック。長洲は迷うことなく、ショート、フリーともにトリプルアクセルに挑戦した。やや着氷は乱れたものの、回転そのものは認定される。GOEマイナス評価があったので完璧な「成功」とはされなかったが、実質的に女子史上8人目のトリプルアクセル達成者となった。
24歳、女子最高齢の成功を目指して。
もちろん、ここがゴールではない。
「24歳。平昌が最後のオリンピックになる。そこで挑戦しなきゃもったいないです」
五輪で成功させれば、24歳という女子最高齢での成功になる。それ以降の全試合、長洲はトリプルアクセルを跳んだ。NHK杯のショートでは、グランプリシリーズでの初認定となり、ガッツポーズも出た。
「日本での試合は大好き。コンビニに行けばおにぎりも買えるし、ダイエットを心配しないで生活できるから。カタカナと平仮名しか読めないし、米国国籍で米国代表だけど、未来は日本人の心も持っているんです。だからNHK杯で日本に『帰ってきた』という気持ちになって、それでトリプルアクセルを認定されたのが本当に嬉しいです」