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長洲未来、トリプルアクセル成功!
浅田真央の存在が人生観を変えた。
posted2018/02/20 11:00
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph by
Ryosuke Menju/JMPA
一世一代のオリンピックの舞台。メダルを狙う人、記憶に残る演技を目指す人、それぞれの目標がある。24歳の長洲未来(米国)にとっての夢は、たった1つ。「オリンピックでトリプルアクセルを」だ。
フィギュアスケート団体戦、女子フリー。演技を終えた瞬間、長洲は握りこぶしを何度も振りかざし雄叫びをあげる。伊藤みどり、浅田真央に続き、オリンピック史上3人目となる女子のトリプルアクセルの成功だった。
「未来には絶対できると信じてやってきました。降りたとき、皆が『出来た!』って叫んだのが聞こえて、楽しくて嬉しかったです」
14歳で全米選手権を制し、天才少女と呼ばれてから10年。才能がありながら、何度も自信を失っては取り戻し、ようやく辿りついたトリプルアクセルだった。
この演技を見ていた伝説の人、伊藤は言う。
「私も真央ちゃんも、子供の頃から跳んでいてオリンピックでも、という夢を持ってきました。未来ちゃんは24歳になってからの成功。オリンピックで決めるために挑戦し続けてきた、計画、ストーリーが彼女の中にしっかりとある。本当に価値あるトリプルアクセルです」
浅田真央の存在で人生観が変わった。
女子の歴史に刻まれる快挙だった。
ロサンゼルスで寿司屋を営む、日本人の両親のもとに生まれた。子供の頃は、学校が終わったあとスケートに行き、夜は寿司屋のカウンターの端っこに座って学校の宿題をする。
「両親との会話は日本語です。母からは日本人らしい躾とか教育というのを受けて育ってきました」
ジュニアの頃から頭角を現した。'07年世界ジュニアで銀メダルを獲得し、16歳で出場した'10年バンクーバー五輪は、怖い物知らずの演技で4位と活躍した。
それまでは、ただスケートが楽しくて滑ってきた長洲。このバンクーバー五輪で、浅田真央のトリプルアクセルを見て人生観が変わった。
「すごい。オリンピックのプレッシャーがかかってる舞台なのに綺麗に決めて。自分もそういうすごいジャンプを跳びたい」