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武藤嘉紀の言葉が、面白くなった。
「耐えて耐えて……ヒーローにね」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2018/02/19 10:30
今季ブンデスでは22節終了時で6ゴール。低空飛行が続くチームにあって、武藤は着実に結果を残している。
耐えて、耐えて、ヒーローになりたい。
現役日本人選手のなかでも、武藤はクロスに合わせる能力はトップクラスで、マインツでもその形で決めたものは多い。長身でなくても得点を奪えているのは、タイミングと動き出しで勝負しているからこそだ。
ただチームの連係が上向かなければ、彼の良さも生かしきれない。2月14日の全体練習後、武藤はキャプテンのブンガートら中心選手4人と居残りでクロスからのシュート練習に20分以上費やしていた。ほとんどの選手がロッカールームへと引き上げていくなかで、監督もまた、その様子をじっと見つめていた。その光景が印象的だった。
武藤は練習を終えて、こう話した。
「監督もピリピリしているかもしれない。でも、それで気合が入っていたし、良い練習ができたんじゃないですかね。ここからの試合は本当に大事で。内容は差し置いて、とにかく勝たないと。悪くても点を取る。貪欲に狙っていかないといけないですよね。今は失点するとガクっと来ちゃうから、とにかく先に点を取られるのだけは避けないと。耐えて、耐えて、自分としてはそこでヒーローになりたいね」
そう言って、武藤は笑った。
W杯もそうだしステップアップしたい。
昨年から武藤は初詣に行き、お祓いをするようになった。一昨年は怪我が重なったが、くしくも厄年だった。それもあって昨年初めには、厄除けや護摩焚きもした。今年もまた初詣に出向き、こんなことを祈ったという。
「身体健全と心願成就」
その意図は、どこにあったのか。
「もちろん、W杯はそうだし、さらにステップアップするための願いも込めた。自分自身、今年は一番勝負の年になると思うし。最高の1年にするために。そして、そのために2年間、上手くいかない時期があったと思えるようにね。今年は良い年になるんじゃないかな、って思っているから」