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武藤嘉紀の言葉が、面白くなった。
「耐えて耐えて……ヒーローにね」 

text by

ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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photograph byGetty Images

posted2018/02/19 10:30

武藤嘉紀の言葉が、面白くなった。「耐えて耐えて……ヒーローにね」<Number Web> photograph by Getty Images

今季ブンデスでは22節終了時で6ゴール。低空飛行が続くチームにあって、武藤は着実に結果を残している。

ケインの上手さに参考になる部分が。

 プレー中だけではなく、ピッチ外での過ごし方にも変化がある。シーズン開幕前、武藤はトーマス・ミュラー(バイエルン)の映像をよく見ていたというが、今は違うアプローチを取っている。

「最近はあまり見ないようにしているんですよね。良い選手のプレーばかり見ていると、自分にできることと、できないこととを、勘違いしてしまうから。ただ(昨季のプレミアリーグ得点王の)ケインのシュートの打ち方や上手さは参考になる部分もあるかな。相手の股の下を狙ったり、タイミングを少しずらすようなプレーはね」

 武藤が手ごたえをつかんだ一方、チーム状態は良好ではない。バイエルン戦をはじめとした強豪との対戦が続き、ドイツ杯も含めれば4連敗中だ。第22節終了時点で入れ替え戦に回る16位に甘んじている。それもあってか2月13日の練習場には、シュバルツ監督の怒声に近い指示が響き渡っていた。

「こうやって立っているだけではプレスにならないだろ!」

 選手は明らかに自信をなくしている。相手の攻撃に腰が引けて、簡単に失点を許す。そして攻撃ではリスクを恐れるがあまりロングボールを蹴り、FWの頭上をボールが通過してしまうなど、形が作れていない。

こぼれてくる可能性が一番高いニアへ。

 ただ武藤の姿勢はブレていない。例えば2月10日のホッフェンハイム戦。マインツが奪った先制点のシーンだ。

 左サイド高い位置からのFKを、ファーサイドのベルグリーンが頭で合わせてゴールが生まれた。よく見ると、ニアサイドにはフリーになっている武藤の姿があった。もしベルグリーンが頭で折り返していたら、もしくはヘディングシュートをキーパーが弾いていたとしても、詰められるポジションを取っていた。しかも、相手のマークがズレるタイミングで。

 チームとして、セットプレーの際に、細かい動きの確認をしているわけではないが、武藤は自分にやれること、やるべきことが何かを考えていた。

「こぼれてくる可能性が一番高いのは、あそこでしょう? ファーサイドで背の高い選手が合わせて、自分のところにこぼれてくるかもしれない。もし自分がファーサイドにゴチャゴチャと入っていっても、高さ勝負になるから良いシュートが打てる可能性は低い。となれば、こぼれ球を狙っているのがいいかなと」

【次ページ】 耐えて、耐えて、ヒーローになりたい。

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