野球クロスロードBACK NUMBER
則本昂大と“ヨシさん”と開幕投手。
5年前の日本一を思い出す短い会話。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2018/02/17 09:00
久米島キャンプのブルペンで投げ込む則本。エースとしての風格は十分だ。
チームの勝利のために無我夢中に。
それから4年後の'17年。則本はWBCへの出場を配慮され、キャリア初の開幕投手を逃したものの、シーズンではルーキーイヤー以来の15勝をマーク。自己最高の防御率2.57、4年連続奪三振王とキャリアハイと呼べる成績を残し、楽天投手陣をけん引した。
則本は昨年の自分をこのように評している。
「'15年と'16年で言うと、10勝、11勝とルーキーイヤーより勝てなかった。でも、防御率はよかった。『じゃあ、なんで15勝できなかったのかな?』と考えた時に、野球に対しての想いとか、いろんな部分で背負いすぎていた部分があったんじゃないかなって。だったら、1年目のように防御率が悪くても、チームの勝利のために無我夢中にやっていた自分を出して行けたらなって思って投げてはいましたけどね」
チームのために無我夢中に――それこそが、則本にとって投手陣の柱となって機能することであり、自身の結果にもつながる、ひとつ大きな答えでもあるのだろう。
佐藤コーチも「18勝から20勝できる」。
初心を胸に刻む。
今年の開幕投手に任命された際も、則本は自分よりもチームを優先したコメントを残している。
「('13年から'16年まで)連続して開幕投手だった時より思いが強いわけじゃないというか。ただ、シーズンの開幕という意味では、チームにとってすごく重要な試合なわけで。1/143試合ですけど、その『1』はスタートでもある。去年のようにチームが波に乗るようなピッチングをしたい。開幕戦でいい成績を残せれば上位にいけると去年に感じたので、その意味でもすごく大切な試合になる」
則本が快投すればチームは波に乗る。
佐藤コーチから「18勝から20勝はできる」と太鼓判を押された楽天投手陣の絶対的な柱は、今年もまた、ルーキー時代のようにがむしゃらに右腕を振って、吠える。
先に見据えるのは歓喜の日本一。そして、過去の自分を越えた姿である。