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渡辺直人、涙のトレードから8年後。
引退ではなく楽天復帰で「恩返し」。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKyodo News
posted2018/02/10 07:00
楽天時代の2010年、サヨナラ打を放ち大喜びする渡辺直人。楽天ファンの思い入れも強い選手だ。
「いつかまた、イーグルスに呼ばれる選手になる」
2010年のオフ。横浜(現DeNA)へのトレードが決まった直後こそ、愛着あるチーム、ファンへの想いが涙となってあふれ出した。
しかし、「いつかまた、イーグルスに呼ばれる選手になる」と、寂しさを抑制し、気持ちを切り替えた。「移籍先でも存在感を示す」。その気概が、直人の支えとなった。
横浜では1年目の'11年から126試合に出場と主力の座を勝ち取った。'13年のシーズン途中には西武へ移籍したが、ここでも存在感を示す。とりわけ楽天戦には強く、'16年にはエースの則本昂大から9打数5安打と好成績を残すなど、直人の持ち味である粘り強い打撃は健在だった。
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守備でもセカンド、ショート、サードを守るユーティリティプレーヤーとしてチームから重宝された。
久米島キャンプでの直人の表情は、すこぶる明るい。
楽天を離れてから2球団で得たもの。直人はそれを「経験」だと断言する。
「それが一番大きいですね。やっぱりね、チームを変わるのって大変なんですよ。新しい環境で自分の色を出して、チームの中心になっていくためには、相当労力を使うというか。その経験をパワーにして、イーグルスでもしっかりやっていきたいですね」
どんなにファンから愛されても、チームメートから慕われても、試合で納得させられるだけのパフォーマンスを発揮できなければ意味がない。
だが、直人は横浜と西武で個性を発揮し、地位を築いてきた。念願ともいえる古巣への復帰を果たした直人が、ファンの、チームの期待を裏切るわけがない。
楽天の一員として迎えた久米島キャンプ。第1クールを無事に終え、「いやぁ、ちゃんと動けてよかったですよ」と言う直人の表情は、すこぶる明るかった。キャンプでは若手選手に精力的にアドバイスを送るなど、ベテランとしての役割もしっかりと果たす。