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メドベデワ、ザギトワを生んだ
ロシア“虎の穴”潜入取材の舞台裏。 

text by

栗田智

栗田智Satoshi Kurita

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photograph byOlga Skorupskaya

posted2018/02/08 08:00

メドベデワ、ザギトワを生んだロシア“虎の穴”潜入取材の舞台裏。<Number Web> photograph by Olga Skorupskaya

バレエやダンスなど、スケーティングの技術以外の演技レッスンにも、多くの時間が割かれているサンボ70。

JGPファイナルで優勝し、13歳で4回転を跳ぶ選手。

 バレエ練習、ウエイトトレーニングと順に見ていき、最後に医務室をのぞくと上下トレーナー姿のおじさんがいた(聞くと一応ちゃんとした医師だった)。厳しい練習のため毎日いろいろな生徒が不調を訴えてここを訪れてくるのだという。

 ダメもとでメドベデワの右足のけがの具合を訊ねてみると、「いやね、上に口止めされてるんだよ。されてるんだけど、そうだなあ、95%ってとこかな」とすんなり教えてくれた。

 上の階に戻ると、偶然そこへ練習終わりのアレクサンドラ・トゥルソワが現れた。

 今シーズンのジュニアGPファイナルの優勝者。まだ13歳ながら練習では4回転ジャンプを成功させてもいる、2022年の北京五輪世代の有望選手だ。

 お母さんと一緒に話を聞くことができた。

「きっかけはソチ五輪です。私もいつかフィギュアスケート選手になりたいなと思いました。5、6歳のときだったのでなんとなくですけど。でも、今はジェーニャ(メドベデワ)というすばらしいお手本となる選手が同じリンクのすぐ目の前にいます。彼女はみんなにとって大きな目標です。本当にメンタルが強くて、練習がすごいんです。私なんてまだまだだ、もっとがんばらなくちゃいけないという気持ちになります」とトゥルソワ。

 練習は厳しいが、ジャンプが飛べるようになったときが一番うれしく、現在は4回転サルコウとトウループを練習しているという。

地方から子供を抱えて上京してきた一家の物語。

「2年前にリャザンから家族みんなでモスクワに引っ越してきました。娘のスケートのためです。夫が働きに出て、息子2人は母が見てくれているので、私はこうして毎日練習に付き添うことができています」と、お母さん。

 大きな大会で優勝したものの、実はそれはあまり大事なことではないという。

「娘が一生懸命取り組んで成長できているということ、それが彼女に自信を与えてくれていること、家族がひとつになって応援できていること、それが私にとってはうれしいんです」

 モスクワの南東200kmにあるリャザンから一家揃って出てくるのは大変だったが、娘の幸せのためならと家族みんなで決断したのだという。

 思いがけず、フルスタリヌィ出身選手の強さの本質に迫る話だった。

【次ページ】 一日中練習をした後、さらに学校の個人授業が始まる。

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