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西武の先発問題をこの男が解決する?
平井克典、新球で「自分の仕事」を。
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byKyodo News
posted2018/02/08 11:30
ルーキーイヤーの昨季は2勝0敗4ホールド、防御率は2.40の成績で終えた。
右打者と左打者で、被打率が8分以上違う!
平井は昨シーズン、右打者の被打率が2割1分6厘だったのに対し、左打者に対しては2割9分7厘という高い打率を残されている。そのデータを踏まえ、対左打者の被打率の高さを克服するために現在、チェンジアップを習得中だ。
「昨年の秋のキャンプで練習を始めて、『これなら試合でも使えるかな』というところまで完成しています。あとはこれからのキャンプ、オープン戦で、実戦で使えるボールに仕上げていきたいですね。
もちろん、自分もその(先発)ポジションを取るつもりでいます。去年以上の成績を残そうと思ったら、去年のままではだめだし、相手に研究もされてくる。ただし、相手がどうこうというより、まずは自分が成長しなければいけないと思って新球の習得を考えました」
もともとスライダーに定評のある平井が、対左打者という課題を克服することができれば、貴重な先発ローテーションの1人に食い込むことは大いに期待できる。
「一概にチェンジアップといっても人それぞれなので、自分なりに、自分らしいボールを投げられたらいいなと思っています。ピッチングコーチと相談して、誰かのまねをするのではなくて、オリジナルを目指そう、と」(平井)
「がんばらないとクビになるぞ」という現実。
平井は愛知県出身で、静岡の飛龍高校を卒業している。高校時代は控えの投手だったが、愛知産業大学を経てHonda鈴鹿に進み才能が開花した。
社会人1年目、転機が訪れた。監督から「横から投げてみよう」と提案されたのだ。
「社会人野球とはいえ、在籍できる選手数は決まっていて、新しい選手が入ってくれば、結果を残せていない選手は引退になります。監督から、『がんばらないとクビになるぞ』と促されたんです。フォームを変えるくらいの気持ちでやらないと、オレ、終わるんだなっていう現実を突きつけられて……。今の投げ方に変えるきっかけでした」(平井)
生き残りをかけて臨んだフォーム改造が功を奏した。その後は先発として活躍し、社会人3年目には都市対抗野球で2勝を挙げ、チームの準々決勝進出に大きく貢献している。
「おそらく監督は僕の体の使い方、腰の回転の仕方などを見て、横から投げたほうがいいと判断したんだと思います」
監督の一言がなかったら、現在、プロとして活躍する自分もいなかったと振り返る。