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車いす陸上界のエース・佐藤友祈。
「東京で金メダルを手にできれば」 

text by

城島充

城島充Mitsuru Jojima

PROFILE

photograph byNaohiro Kurashina

posted2018/01/15 08:00

車いす陸上界のエース・佐藤友祈。「東京で金メダルを手にできれば」<Number Web> photograph by Naohiro Kurashina

急激な成長を果たした佐藤友祈。その視線は2020東京へと向かっている。

練習を終えると、日常用の車いすに乗り換えて。

 東京大会まであと3年を切ったある日の午前中、佐藤の姿は岡山市の県立陸上競技場にあった。地元の大学や高校の陸上部員たちとトラックを共有しながら、障害の程度が軽いT53クラスの松永、T54クラスの生馬と一緒にラップを刻んでいく。周回を重ねるごとに2人に離されそうになるが、「そこから粘って2人に食らいつくことが、最高の練習になる」という佐藤は、懸命にハンドリムを回し続けた。

 練習を終えると、日常用の車いすに乗り換え、駐車場に停めたマイカーにレーサーを積み込んで仕事場へ向かう。それは特別な一日ではなく、佐藤がこれまでも、そしてこれからも積み上げていく日常である。

「僕がロンドンパラリンピックの光景を見て人生を変える勇気をもらったように、僕の存在が誰かの力になれば、それがまた、僕の新しい力になっていきます。そんなつながりがずっと続いて、東京で金メダルを手にできれば最高です」と、佐藤は言う。

 つながっていくのは、苦境と向き合った人間が共有する痛みや希望だけではない。巡り合ったいろんな立場の人たちの思いを受けとめた佐藤が東京大会のスタートラインにたどり着いたとき、その走りは多くの人の心を揺さぶるはずである。

(Number937号『佐藤友祈「感謝の気持ちが僕を強くする」』より)

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