“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
前橋育英と流経柏の凄すぎる決勝戦。
高校サッカー離れした“戦術バトル”。
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![安藤隆人](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/b/f/-/img_bf61245775818e993f7b27afcadd69be52906.jpg)
安藤隆人Takahito Ando
photograph byAFLO
posted2018/01/09 12:00
![前橋育英と流経柏の凄すぎる決勝戦。高校サッカー離れした“戦術バトル”。<Number Web> photograph by AFLO](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/f/7/700/img_f7f2639d1d6480e9ea5d1457949973ba151307.jpg)
熱戦に終止符を打った前橋育英・榎本の一撃。このフィナーレに至るまでの戦略は、高校生離れしたものだった。
「ツインタワーにして、何をすべきか分かっていた」
「インターハイ準決勝のときも、ツインタワーにして攻撃に出ました。ただそこで単純に放り込んでしまい、相手の得意とする土壌でプレーして守りきられてしまった。僕たちのストロングポイントは、空中戦もできるけど、足下で連動して崩せること。それをみんな分かっていたし、そのトレーニングを常にやって来たから、監督がツインタワーにしてきた時点で、何をすべきかみんな分かっていた」(松田)
ツインタワーの1人がサイドに流れ、もう一方が足下でボールを受ける。それによって、相手CB2枚を崩して、中央のスペースに飯島や田部井悠、田部井涼、塩澤を走り込ませる。特に飯島は左サイドに回ってから「サイドから中に動いて前向きにボールをもらいやすくなったし、ツインタワーの動きに相手が釣られたことで、仕掛けるスペースが増えた」と活力を取り戻した。
延長戦はいらない、決めきれというメッセージ。
戦術的意図を統一させた攻撃は、流通経済大柏の堅い守備を崩し始める。
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それでも79分、82分と計3回の大きな決定機を作り出したが、流通経済大柏の気迫のディフェンスに弾き返された。ここで“打てども入らず”という嫌な雰囲気になってもおかしくなかった。だが「自分達がやっていることは間違っていないと確信していた」と飯島が語ったように、選手の口からは「大丈夫だ! このまま押し込めば行けるぞ!」という活発な声が飛んでいた。
「(宮崎)鴻さんが入って来たことで、より山田監督の意図が分かった。監督の素晴らしい采配が背中を押してくれた」(榎本)
「延長戦はいらない。“決めきれ”というメッセージに後押しされた」(宮崎)
優位に立った前橋育英に迷いは一切なかった。それが冒頭で触れた劇的決勝弾という形で結実した。