“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
富山第一・大塚監督の革新的戦術。
攻撃的5バックと“14ゾーン”とは?
posted2017/12/26 17:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
北信越の名門・富山第一を率いる大塚一朗監督。
この人物と話せば話すほど、サッカーへの知見が深まっていく。よく電話などでサッカー談義に花を咲かせるが、気が付くと1、2時間を経過しているのがザラだ。
大塚監督サッカーをロジカルに、客観的に分析し、起こった現象や戦術的な見解を理路整然と話す。彼の思考は高校サッカーの枠を超え、グローバルな視点を持つ“プロフェッショナルマイスター”と言える。
大塚監督の指導理念はイングランドにある。富山市で生まれ育った大塚監督は、富山第一、法政大でプレーした後、日本サッカーリーグの名門・古河電工でプレーをした。
古河電工関係者の紹介で25歳の若さにしてウェストハムの指導者講習を受け、1年を掛けてインターナショナルライセンスを取得。2002年までアローズ北陸(現カターレ富山)で選手兼コーチをこなした後、再びイングランドへと渡った。
選手権優勝監督になってもヨーロッパで学ぶ向上心。
「当時、インターナショナルライセンスがUEFAのB級ライセンスに相当することが分かったんです。“じゃあ(当時)最上級のA級ライセンスを取得しよう”と思って、再び渡英することを決めました」
2002年から日本とイングランドを何度も往復。ヨーロッパの最先端の指導に触れ、2年後にA級ライセンスを取得。アルビレックス新潟シンガポールで指揮を執った後、2008年に母校のコーチを勤め。2012年には監督に就任。組織的かつ戦術的に長けたサッカーで第92回全国高校サッカー選手権大会優勝に輝いた。
大塚はそれ以降も向上心を持ち続けている。毎年必ずイングランドを訪れ、最新のサッカーにアップデート。また今年からはAFCプロライセンスを受験し、チームを指揮する傍ら、韓国やイングランド・バーミンガムでの研修に精力的に取り組んでいる。
今年の富山第一を一言で表現するなら“戦術的強者”に仕上がっている。例年、県内出身の選手が集まる同校は、個人戦術とチーム戦術にフォーカスした。それに加えて能力の高い選手が揃ったことで、よりレベルの高いチームを作り上げている。