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松坂大輔は少年ジャンプの主人公だった。
「50歳までマウンドに」と語った頃。
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph byAFLO
posted2017/12/22 07:00
横浜高、西武、レッドソックス、侍ジャパン。当時の好投を知っていれば、松坂大輔という文字だけで湧き上がる想いがあるのだ。
あの時の松坂は『少年ジャンプ』の主人公だった。
2006年第1回WBCのMVPに輝き、約60億円の落札額と複数年契約の年俸を合わせ“100億円右腕”と称された男は、メジャー1年目の'07年シーズンに200投球回&200奪三振をクリアし、15勝を挙げ、ワールドシリーズでも先発して勝利投手となり(ついでに打席では自らタイムリーを放ち)、なんとチームは世界一に輝いた。
翌'08年春に東京ドームで開催されたアスレチックスとの日本開幕戦では先発マウンドへ。よく大谷翔平を「まるでマンガのような活躍」と形容するが、この頃の松坂の活躍も充分『少年ジャンプ』の主人公のようだった。
'07年から'08年にかけて、当時の野球本市場では一大ブームと言っても過言ではないほど多くの松坂本が出版されている。今回はそんな最高で最強だった「2007年の松坂大輔」の姿を記録した2冊の本を紹介しよう。
ニューズウィーク「注目の21人」に選出されたり。
【『松坂大輔の直球主義』(構成・文 吉井妙子/朝日新聞出版社/2007年11月20日発行)】
「それにしても、12月は本当に慌ただしかった。契約から取材、CM撮影まで、普段の1年分ぐらいの神経を使った感じです(笑)」
野球選手として絶頂期にあった、26歳の松坂のコメントである。本書は『週刊朝日』の連載をまとめたものなので、当時の様子が時系列で生々しく感じられる一冊だ。レッドソックスの入団会見を終え、一時帰国した'06年12月22日の松坂の売れっ子ぶりが凄まじい。
午後9時からNHK、11時半から深夜1時の1時間半で、TBS、テレ東、日テレ、フジの4局を回り一気に出演。まさにレッドソックス入団は国民的な関心ごとだったわけだ。ちなみにこの頃、アサヒビール、トヨタ、コカ・コーラのCMにも登場。米ニューズウィーク誌の「2007年に注目の世界の21人」特集記事で、スポーツ選手としては世界で唯一選出された。
間違いなく、野球界は彼を中心に回っていた。