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ISU公式初の3アクセル+3トウループ。
全日本でも大注目、15歳の紀平梨花。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2017/12/15 08:00
浅田真央の時と同様、年齢制限のため平昌五輪には間に合わない紀平。3アクセルを武器に、世界トップを目指して欲しい!
「大きな舞台だと緊張するところがあった」
その名前に海外でも注目が集まるようになったのは昨年9月のことだ。
ジュニアグランプリシリーズ第5戦スロベニア大会のフリーで、史上7人目となる3アクセルに成功。さらに女子史上初となる3ジャンプ8回にも成功し、優勝したのである。
ただし、昨シーズンは大会ごとに成績が大きく上下する不安定さも見せた。
「大きな舞台だと緊張するところがあったと思います。リンクによって感覚が違ってしまうところもありました」
リンクごとに異なる氷の状態に適応するのに時間がかかっていたのだ。
加えてメンタル面も課題だった。
注目されると、ジャンプを跳ぶ前からカメラのシャッター音が鳴り響くようになった。それが気になるくらい繊細な、まだ幼い一面が残っていたのだ。
克服するために、演技に集中するよう心がけた。積極的に大会へ出場し続けることで様々なリンクの経験を積んでいき、いつしかメンタル面での不安も解消されていった。と同時に、自然と各リンクへの氷への適応力もついてきた。
「最近では1時間くらいで氷の感触がわかるようになってきました」
その成果が大舞台での3アクセル成功だったのだ。
ロシアの5選手との競り合いの中から生じた気負い。
「最近はこうすれば跳べるとイメージできてきています。80%くらいの自信はあります」
ただし、反省もある。
2つ目の3アクセルがシングルになったことだ。
「1本目で決めるといつもは安心して2本目に集中できていました。でも今回は2本目も成功しないと巻き返しができない激戦だったので、『これも決めないと』と心の中でつぶやくくらい気持ちがありすぎました」
ロシアの5選手との競り合いの中から生じた気負いによるミスだった。結果、試合そのものは4位にとどまり、表彰台にあと一歩で手が届かなかった。
「アクセルの前は言葉が少しでもよぎると跳べないと感じたので、もっと集中できるように、と思います」
課題は残った。でもそれがまた次につながると捉えている。
「まだ経験不足もあるし、今回も勉強になりました」