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FA移籍の裏で「人的補償」が切ない。
意外と活躍する選手もいるのに……。 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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posted2017/12/06 07:00

FA移籍の裏で「人的補償」が切ない。意外と活躍する選手もいるのに……。<Number Web> photograph by Kyodo News

巨人にとって24人目となるFAでの獲得選手、野上亮磨。人的補償で西武が誰を選ぶか、また世を騒がせることだろう。

「人的補償」、ものものしい名前だ。

 また日本のFAには、MLBにないいろいろなルールがある。FAで選手を獲得する球団は、FA移籍する選手が高額年俸である場合(ランクA、ランクB)、譲渡する球団に対して補償をしなければならない。補償は金銭だけでもいいが、金銭に加えて選手が1名見返りとして移籍することもある。これを「人的補償」という。

「人的補償」、ものものしい名前だ。「身代金」とか「人身御供」とかいう言葉が浮かんでくるが、事実「人的補償」を巡っては、さまざまなドラマが起こっている。なお、「人的補償」は海外FAにはない。

「人的補償」は、移籍元球団が自由に指名できるわけではない。移籍先球団が「プロテクト」したリストから漏れた選手の中から指名する。

 つまり、FAで選手を獲得する球団は「この選手は要る」、「この選手はとられても仕方ない」という選別をしなければならないのだ。これはなかなか切ない。

 2011年オフにソフトバンクが西武の左腕帆足和幸をFAで獲得した時に、西武は「人的補償」を求める可能性があったが、ソフトバンクは元三冠王の松中信彦をプロテクトリストから外した。チームの至宝である松中を「移籍してもいい」選手にしたのだ。もちろん、プロ野球は実力の世界だからそういうことも起こり得るが、松中の心中察するに余りある。

じつは、活躍する選手が結構でている人的補償。

 ただ現実的には「人的補償」は、出世前の若い選手が選ばれること大半だ。彼らにしてみれば、FA移籍する選手の身代わりで望まない移籍をするのは辛いことだが、じつはそんな中から活躍する選手が結構出ているのだ。

 これまで、FAにともなう「人的補償」で移籍した選手は23人いる。

1996年・川邉忠義 (巨人)→(日ハム) 〇FA選手 河野博文
2002年・平松一宏 (巨人)→(中日) 〇FA選手 前田幸長
2002年・ユウキ (近鉄)→(オリ) 〇FA選手 加藤伸一
2006年・小田幸平 (巨人)→(中日) 〇FA選手 野口茂樹
2006年・江藤智 (巨人)→(西武) 〇FA選手 豊田清
2007年・吉武真太郎 (SB)→(巨人) 〇FA選手 小久保裕紀
2007年・工藤公康 (巨人)→(横浜) 〇FA選手 門倉健
2008年・赤松真人 (阪神)→(広島) 〇FA選手 新井貴浩
2008年・岡本真也 (中日)→(西武) 〇FA選手 和田一浩
2008年・福地寿樹 (西武)→(ヤク) 〇FA選手 石井一久
2011年・高濱卓也 (阪神)→(ロッテ) 〇FA選手 小林宏之
2012年・藤井秀悟 (巨人)→(De) 〇FA選手 村田修一
2012年・高口隆行 (ロッテ)→(巨人) 〇FA選手 サブロー
2013年・馬原孝浩 (SB)→(オリ) 〇FA選手 寺原隼人
2013年・高宮和也 (オリ)→(阪神) 〇FA選手 平野恵一
2014年・鶴岡一成 (De)→(阪神) 〇FA選手 久保康友
2014年・一岡竜司 (巨人)→(広島) 〇FA選手 大竹寛
2014年・藤岡好明 (SB)→(日ハム) 〇FA選手 鶴岡慎也
2014年・脇谷亮太 (巨人)→(西武) 〇FA選手 片岡治大
2014年・中郷大樹 (ロッテ)→(西武) 〇FA選手 涌井秀章
2015年・奥村展征 (巨人)→(ヤク) 〇FA選手 相川亮二
2017年・金田和之 (阪神)→(オリ) 〇FA選手 糸井嘉男
2017年・平良拳太郎 (巨人)→(De) 〇FA選手 山口俊

【次ページ】 FA移籍でやってきて人的補償で去る切なさ。

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