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川崎優勝を象徴する最後の5点目。
「甘い」と言われても貫いた攻撃姿勢。
posted2017/12/04 12:10
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph by
Asami Enomoto
初戴冠の瞬間は、表示されていたアディショナルタイムの5分が過ぎたときに訪れた。
スコアは4-0。
目の前の敵、大宮アルディージャとの勝敗はすでに決していたが、それでも川崎フロンターレの選手たちはゴールを奪いにいく構えを崩さない。
自陣深い位置でボールを奪った中村憲剛からパスを受けた家長昭博が逆サイドに展開。突貫小僧・長谷川竜也がカウンターの形を作ると、右に並走していた小林悠を使わずに、自ら持ち込んで左足を振り抜き、ゴールネットを揺らした。
「最後のは自分で打とうと思いました。(パスをする選択肢は)なかったです」
長谷川が決めたダメ押し弾の祝福に、今年の公式戦53試合すべてに帯同しているGK・新井章太が飛び出してくる。抱擁による喜びの輪ができている最中、家本政明主審のタイムアップを告げるホイッスルが鳴り響いた。
一瞬の静寂の後、静岡からの朗報が確認されると、等々力競技場はこれまでにない歓喜に包まれた。
初優勝が決まるゲームのラストプレーを、ゴールで飾ったサッカークラブもそうないだろう。だが、あのシーンにこそ、攻撃的な姿勢を最後まで貫くクラブ哲学が凝縮されていたように思えてならない。
「守備も攻撃の一部なんだ。守備でも魅せよう」
鬼木達監督が指揮した今季もやはり、川崎は攻撃的なチームだった。
それはリーグトップとなる総得点71という数字が物語っている。さらに「守備も攻撃の一部なんだ。守備でも魅せよう」と説く指揮官の下、爆発的な攻撃力を維持したまま、守備力も向上。クラブ史上最少となる総失点32を記録した(リーグ3位の少なさ)。序盤の試行錯誤を経て、チームとして成熟した強さを発揮し始めると、8月以降リーグ戦は15試合負けなしで駆け抜けた。
攻守の両輪が噛み合っていたことは、得失点差の39という数値が如実に示している。
そしてこの得失点差で得たアドバンテージが、最終的には勝ち点72で並んだ鹿島アントラーズとの明暗を分けた。