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川崎優勝を象徴する最後の5点目。
「甘い」と言われても貫いた攻撃姿勢。
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byAsami Enomoto
posted2017/12/04 12:10
表彰式での「風呂桶」も、また地域密着で育ってきた川崎フロンターレらしい。川崎だからできる、シャーレを掲げる以上に価値あるシーンかと。
「これまでの全てに意味があったんだなと思います」
ロースコアで確実に勝ち切るのではなく、より多くのゴールを奪って勝ちにいく志。
もちろん、その前がかり過ぎるスタイルが仇となって、苦渋を舐め続けた歴史もあった。しかし、楽しく、美しく勝利して、観る人を魅了するサッカーを表現しようとする心意気に、今回はサッカーの神様が微笑んでくれたのかもしれない。そうやって達成した初戴冠だった。
“悲願過ぎる”初優勝から一夜明けた日、朝方に寝たという中村憲剛は、感慨深げにリーグタイトルを、こう噛みしめていた。
「サッカーの神様はいてくれたんだなって……だとしても、待たせすぎだけど(笑)。これまでの全てに意味があったんだなと思います。結果を出すと話ができることもたくさんあるから」
川崎の優勝は日本サッカー界のエポックになる。
あれは2009年頃だっただろうか。このクラブがタイトルを取る意味を、彼はこう話してくれた。
「フロンターレがタイトルを取るということは、自分たちのことだけではなくて、日本サッカー界にとってもひとつのポイントになると思っている。J2から昇格してきて観客もどんどん増えてきたクラブがタイトルを取るというのは、鹿島がタイトルを取ることとはまた意味が違いますから」
しかし、その後はあと一歩の壁にことごとく阻まれ続けた。
在籍歴は15年。クラブが経験した過去8度の準優勝のうち7度を経験した。そんなバンディエラにとって、もたらされたリーグチャンピオンというタイトルは、自分たちの正しさを肯定してくれるものになった。
「このクラブの道が間違っていない。それを肯定するには優勝するしかなかった。これまでは、いくら自分が言っても『でも負けてますよね?』で終わっているから。だから結果が欲しかった。それに良い準備をして、やりきって優勝したという成功体験もある。来年、苦しいことがあっても、またみんなで乗り越えられるんじゃないかな。それを経験として持っているというのは大きい」