話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
なぜガンバU-23は機能不全だったか。
宮本恒靖監督「選手が揃わない」
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/12/01 10:30
FIFAマスターも卒業した宮本恒靖監督はエリートである。しかし、現場で叩き上げる経験もまた彼を強くするのだ。
監督の立場で、どんな言葉を使うかという経験。
収穫のひとつは、言葉の使い方だろう。
もともと宮本は日本代表のキャプテンで話術に長けており、いろんな監督と話をしてきただけに、引出は豊富に持っている。それを今度は監督の立場でどう選手に伝え、チームの変化につなげられるか。状況を打開する必要があるハーフタイムに、言葉の力が発揮された試合もある。
たとえば、YS横浜戦。先制して追いつかれた後、相手に押しこまれて一方的な試合展開になった。業を煮やした宮本監督は、ハーフタイムで選手にこう指示した。
「2トップにボールが入るとうまくいっている。そこにボールを入れてサポートを早くして前に出ていこう。インサイドハーフの選手がボールを持っている時は、それを追い越すなり、前への推進力を出していこう。守備はバイタルに下りてくる選手に3バックの中央の選手がチャレンジしよう」
すると後半、右サイドで追い越す動きがみられるようになり、守備では3バックの中央のぺスヨンが相手にチャージするようになった。そうして、チームに動きが出て、逆転劇につながり、シーズン初の連勝につながった。
最終戦でも「最終戦、0-2で負けていいのか」と選手にハッパをかけ、後半は風上に立つことを生かしてプレスからボールを奪い早く攻めることを意識させた。さらに芝本蓮を入れてボランチの展開力を生かしつつ、郡の1トップ、一美、森の2シャドーでサイドの深いところに侵入していく戦術的な指示をした。それが功を奏し、後半15分から5分間で2点を取り、相手に追いついたのだ。
監督のビジョンを選手が理解し、ピッチで表現し、結果を出したのである。
強化の場として有効活用できる方策を。
「今いる選手でどうやって流れを変えていくか。この試合(相模原戦)のようにハーフタイムの指示で選手を変えることができたのは収穫の1つだと思います」
宮本監督は、少し胸を張ってそう言った。
今シーズン、U-23はなかなか出場機会を得られない23歳以下の選手の強化育成の場としてチームが立ち上がったが、実際にはなかなか思うような強化と結果を得られなかった。来季のために課題を整理し、強化の場として機能させために宮本監督のフィードバックをどのくらい活かせるか。
トップの再生同様、クラブは危機感を持って取り組むべきだろう。