ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
ゴルフボールの軌道を色付けした男。
「米のプロゴルフ成功の理由は……」
posted2017/11/21 07:00
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
ShotVision
アメリカでゴルフが初めてテレビで中継されたのは、いまから70年前のことだそうだ。
1947年、ミズーリ州セントルイスCCで行われた全米オープンは、伝説的プロであるサム・スニードがルー・ウォーシャムにプレーオフで敗れ、グランドスラムのチャンスを逃した戦いのひとつだった。
この大会はごく小さなローカルエリアでのみ中継され、全国放送されるまでにはそれから数年を要した。'56年に初めてマスターズがCBSを通じてお茶の間に届けられ、直後の'58年から2年おきに4回、オーガスタナショナルGCで勝ったのがアーノルド・パーマーだった。
ジャック・ニクラス、ゲーリー・プレーヤーを交えた“ビッグ3”時代は、まさにゴルフ中継の最初の歩みとともに彩られてきたのである。
100人前後が、別の場所で同時に打っている。
放送ネットワークの広がりとともに、ゴルフ中継における映像技術も進化の道をたどってきた。
プロゴルフのテレビ放送は他の球技、スポーツの放送とは異なる独特の難しさがある。まずフィールドが広く、マッチプレーなどを除けば、100人前後の選手が別の場所でほぼ同時にそれぞれのボールを打っている。時には林から脱出を試みたり、思わぬトラブルショットを強いられることがあるため、固定カメラだけではプレーを追いきれない。仮にすべてのショットをカメラに収めようとすれば、機械も、人員も、とてつもない数になる。
ゴルフボールは直径約43ミリメートルと小さく、豪快なロングショットとなれば、実際のコースでも弾道をつぶさに目で追うのは至難の業だ。
その問題を解決するため、最近では写真のように、選手が放つショットの軌道を“色付け”するメカニズムも定着した。