“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
ともにJ内定、高橋大悟と生駒仁。
鹿児島で最高の宿敵、親友の物語。
posted2017/11/16 08:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
第96回全国高校サッカー選手権大会、鹿児島県予選決勝。神村学園vs.鹿児島城西の一戦は、高校サッカーファンから大きな注目を集めていた。
神村学園には清水エスパルス入団内定のFW高橋大悟が、鹿児島城西には横浜F・マリノス入団内定のCB生駒仁が在籍。2人のプロ内定選手が直接対決をしたからだった。
0-0のまま延長戦でも決着がつかず、勝負はPK戦へ。8人目までもつれ込む大接戦の末に鹿児島城西の4連覇を阻んで、神村学園が4年ぶり5度目の選手権出場を手にした。
鹿児島城西8人目のキックが、神村学園GK冨吉優斗の手によってはじき出された瞬間、鹿児島城西の選手はその場に崩れ落ち、神村学園は冨吉目掛けて歓喜のダッシュをした。
「今日はお互いに全力で戦おうぜ! 楽しもう」
無情なコントラストが描かれたピッチで、神村学園のエースナンバー14番を背負った高橋は真っ先に、うずくまる生駒の元に駆け寄った。そっと肩に手をやって言葉を掛けた高橋は、生駒の横に座り込み、天を仰ぎながら再び生駒に言葉を掛けた。生駒も泣きじゃくっていたが、起き上がると高橋に言葉を掛けた。
これは2人が交わした試合前の約束だった。
「明日は泣いても笑っても高校最後の対決。結果はどうなるか分からないけどお互い悔いなく終われるようにしようぜ。どっちかが必ず全国に行くんだ、勝った方は自信を持って、負けた方は勝った方を信じて想いを託そうぜ」
試合当日の朝、高橋は生駒にこうメールを送った。生駒からの返答はこうだった。
「そうだね、今日はお互いに全力で戦おうぜ! 楽しもう」
激戦を終えて、2人はこの約束を果たすべく、言葉を交わしたのだった。