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ともにJ内定、高橋大悟と生駒仁。
鹿児島で最高の宿敵、親友の物語。 

text by

安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

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photograph byTakahito Ando

posted2017/11/16 08:00

ともにJ内定、高橋大悟と生駒仁。鹿児島で最高の宿敵、親友の物語。<Number Web> photograph by Takahito Ando

激しいマッチアップを見せた高橋(左)と生駒。Jリーグの舞台で“再戦”の日を待つ。

PK戦、生駒の蹴ったボールは相手GKに弾かれ……。

 49分には「仁の視界から消えて飛び出すことを意識した」と絶妙な飛び出しで、生駒の背後を突いた高橋が、足下に届いたスルーパスをダイレクトでゴールに流し込む。オフサイドの判定が下ったとはいえ高橋の高度なプレーだった。ただ生駒もそれ以降は背後をケアしながら、2列目からの飛び出しを消しにかかり、決定機を作らせなかった。

 そして勝負は、前述の通りPK戦へ。

 後攻の鹿児島城西、1人目のキッカーは生駒だった。

 ゆっくりとボールをセットして助走から放ったシュートはGK冨吉がはじき出した。頭を抱える親友を見つめながら、高橋は大きく息をついた。そして5人目に登場した高橋はきっちりとゴールに決めた。

「俺たちには次があるから……まだ終わりじゃない」

 冒頭で触れた、試合終了後の会話には続きがある。

「顔を上げろ。俺たちには次があるから……まだ終わりじゃないぞ」

 号泣する生駒に高橋が掛けた言葉だった。

「仁が外したのは正直、複雑だった。真剣勝負の場なので、そんなことを言っている場合じゃないことは分かっていたけど、あいつの頑張りも知っていたし、残酷だなと思った……。だからこそ、すぐに言葉を掛けに行きました。横に座ったのは、何かあの場を離れるのが名残惜しいと言うか、仁とのいろんな思い出がよみがえって来たんです。思わず力が抜けて、『楽しかったね』という言葉が出てしまいました」

 試合後の整列。2人は再び握手を交わした。

「仁のおかげで俺は成長できたと思う。本当にありがとう」

「ありがとう大悟。選手権、頑張ってくれよ」

 これ以上の言葉は必要なかった。試合前に2人で交わした約束を果たし、親友対決の“高校編”は幕を閉じた。

【次ページ】 「2人で鹿児島の代表として応援してもらえる存在に」

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