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バドミントン世界トップクラスの山口茜。
東京五輪で「強くなるため」の信念。
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byYoshikazu Shiraki
posted2017/11/16 11:00
五輪直後に金メダリスト、世界ランク1位を撃破。
五輪後、少し休息を取る選手や引退を決意する選手もいる中、山口はすぐに次の大会へ目を向け、練習を再開させる。「1年を通して結果を残したいし、すべての試合で100%の力を出したい」と考える彼女らしい決断だった。
すると、2カ月後の'16年10月のスーパーシリーズの韓国オープンと、続くデンマーク・オープンで見事優勝する。デンマーク・オープン準決勝ではリオ五輪金メダリストのカロリナ・マリン(スペイン)を倒し、決勝では世界ランク1位(7月27日現在)、台湾の戴資穎を撃破した。粘り強くラリーを制し、持ち前のフットワークでコートを走り回りタイトルを掴んだ。
さらにUAEのドバイで行われたスーパーシリーズファイナルズの出場権も手にすると、同大会では再びリオ五輪女王を破った。今年も3月の全英オープン、インド・オープンで3位。結果はもちろんだが、ハードな戦いに挑むなかでプレー面での成長を実感し、自信も掴んだ。
奥原の再戦で見せた粘り強い戦いぶり。
たとえば、奥原との対戦となった今年6月のオーストラリア・オープン決勝。第1ゲームを12-21で落とした後の第2ゲームは、最大9点差と大量リードされていたが、23-21で逆転に成功した。第3ゲームは奪い返され敗れたものの、粘り強いプレーが随所で見られた。簡単には負けなくなった。
「これまでは大差がついてしまうと、そこで気持ちが切れてしまうところがありました。諦めが早いタイプなので(笑)。でも、そこでいろいろな人の顔が思い浮かんだんです。せっかく自分のプレーを見に来ている人たちや自分をサポートしてくれる人たちに対して失礼だなと。感謝をプレーで示さないとなって。このままでは終われないという気持ちでプレーした結果が、第2ゲームの逆転につながって面白いゲームになった。そういうゲームを今後は勝ちにつなげていけたらと思っています」