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持ち込んだのは規律だけじゃない。
東京V・ロティーナ監督のJ1昇格計画。
posted2017/11/11 07:00
text by
海江田哲朗Tetsuro Kaieda
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
あったのか疑わしいほど短い秋の季節が過ぎ去り、忍び寄る冬の気配とともにJ1昇格争いは佳境を迎える。
中位に多数のチームがひしめき合い、大混戦だった2017シーズンのJ2。熾烈なサバイバルの末、いよいよ上位チームが絞り込まれてきた。
10月28日のJ2第39節、5位の東京ヴェルディと2位のアビスパ福岡の一戦。福岡のスローインの場面で、渡辺皓太に烈火のごとき叱責が浴びせられた。声の主は今季から東京Vを率いるミゲル・アンヘル・ロティーナ監督である。
渡辺は言う。
「あれはスローインの時の立ち位置を間違ったから。ボールが入ったら、すぐにプレスにいくのが自分の役目でした」
渡辺は今季ユースから昇格したばかりのルーキーで、165cmと小柄ながらアジリティーに長け、球際の争いも強い。東京Vのアカデミー育ちらしく器用にボールを扱え、攻守に広く貢献できるミッドフィルダーだ。今季、ロティーナ監督のもと、初めて戦術的な細かい要求に触れることになった。
「ポジショニングについての指摘がほとんどですね。なぜ、自分がそこにいなければならないのか。状況に応じて各自に仕事があり、ほかの選手の役割を含めて理解していなければ取り残されてしまう」
「失敗を恐れず、10%でも可能性が見えれば縦に」
一方で、ロティーナ監督は卓越したスピードを持つ安西幸輝に対しては、「失敗を恐れず、10%でも可能性が見えれば縦に仕掛けろ」と継続的なテーマを課している。
「今年、やっと自分のドリブルがつかめた気がします。相手を抜き切るだけではなく、一瞬の動きで外してからクロスを入れる動作がスムーズにできるようになった。チャレンジを重ねたことで、どの位置で何をやるべきか頭の中がスッキリ整理された感じです」
そう話す安西は、前線から最終ラインまでサイドならどこでもこなせるプレーの幅を身につけた。