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ACL決勝をもぎとった梅崎司の献身。
スーパーサブにベテランがいる強さ。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byAFLO
posted2017/10/19 17:00
闘志を前面に出す梅崎司は、浦和サポーターからの信頼も厚い。一発勝負のトーナメントで、雰囲気を変えられる存在は貴重だ。
柏木に代えて梅崎を投入する、堀監督の賭け。
後半37分、約10分間続いた上海の攻撃に対して、浦和は柏木陽介に代えて梅崎を投入した。緊迫した状況で、均衡が保たれているチームに新しい選手を入れることには、メリットと同時にデメリットも想像できる。
いかにスムーズにゲームに入れるか? 30歳のベテランとてそれは容易ではないはず。それでも、堀孝史監督は梅崎の経験に賭けたのだろう。バランスをとりながら、追加点のチャンスを作ることに。
39分、左アウトサイドでありながらも、DFラインに吸収されるほど自陣に押し込まれていたなか、味方がボールを奪うとみると、梅崎は斜めにランニングし、中央から縦に飛び出す。
するとあっさりと敵陣を抜けて、ドリブルでボールを運び、シュートを放った。得点には至らなかったが、奪ったボールを攻撃に繋げず苦しい状況が生まれていた浦和を活性化させる大きなプレーだった。
西川「奪われたら奪い返すという気持ちが表れていた」
終盤には、右サイドの深い位置まで猛追し、ボールを奪いとる梅崎がいた。89分には左サイドで丁寧にボールホルダーをマークし、攻撃を遅らせた。
「やってはいけない自分のミスで奪われたボールを取り返しただけなので、最低限のことをしただけ」と本人が語る右サイドでの猛追シーンは、「奪われたら奪い返すという気持ちが表れていた」と西川が評するように、気迫漂うものだった。そんなプレーがチームメイトに勇気を与えたはずだ。残り10分間、ベテランの奮闘がさらなる緊張感と高揚をもたらし、浦和の完封につながったと思えた。
「試合に入るとき、いつもは緊張しないのにひさびさにすごく緊張しました。攻撃面で違いを生み出したいという気持ちがあった。ゴールを生み出せれば、チームに勢いが出るだろうし、僕個人の評価も変わってくると思うから。でも、守備の部分ではしっかりとチームのタスクをこなすのは当然のこと。それができるからこそ、起用してもらったと思うので」