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F1ホンダ提携解消、その本質は。
「研究所」と「青山」に距離はないか。
posted2017/09/24 08:00
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Hiroshi Kaneko
「今回、志半ばでマクラーレンと袂を分かつのは非常に残念ですが、お互いの将来に向けた最善の道として決断しました。これまでマクラーレン・ホンダを応援してくださったファンの皆さまをはじめ、2015年の復帰の準備段階から多くの苦楽を共にしてきたドライバーやチーム、関係者の皆さまに心より御礼申し上げます。
2017年シーズンはマクラーレンと共に最後まで戦い抜き、2018年以降もF1レース活動を継続してまいります」
これは9月15日に発表されたホンダのリリースで、マクラーレンとの提携を今シーズン限りで解消する旨に添えられた八郷隆弘社長のコメントである。その行間には、悔しさがにじみ出ていた。
なぜ、ホンダは苦渋の決断を下さなければならなかったのか。その要因はさまざまある。マクラーレン側では、昨年末にロン・デニス体制が変更されたことも大きく関係していると聞く。もちろん、主な要因がホンダのパワーユニットにあったことは間違いない。だがそれは単にホンダの技術力の問題だとも思えない。そこには、ホンダが抱えている2つの問題が見え隠れする。
2013年F1復帰会見での、当時の社長の言葉は……。
ひとつは、戦略の甘さだ。2013年5月のF1復帰会見で、当時の伊東孝紳社長は、参戦に至った背景を次のように熱弁した。
「前回の参戦において満足のいく結果を得られないまま、やむを得ず撤退に踏み切ったことは、私自身たいへん悔しい思いがあり、同時にファンの皆様のご期待にそえなかったことをとても残念に思っています。(中略)
新たな技術の方向性とホンダが目指しています開発の方向性が合致していく中で、将来ホンダを担う若い技術者からもF1に挑戦したいという声が挙がるようになって参りました。(中略)
ホンダが勝ち残っていくためには、これからも卓越した技術進化を続けていかなければなりません。そのためには若い技術者が自らの技術を世界で試し、磨く場が必要です。これからのF1はそれを実現するのに最適な場であると考えました」