ミックスゾーンの行間BACK NUMBER
高萩洋次郎が味わった敗北感と情熱。
「このままじゃ代表では戦えない」
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byAsami Enomoto
posted2017/09/09 08:00
W杯行きを決めたオーストラリア戦、高萩洋次郎は歓喜の輪の中にいた。次はピッチに、彼はそう思っているはずだ。
「このままじゃ、自分は代表で戦える選手じゃない」
帰国翌日の練習を終え、高萩が代表活動を振り返った。いつもの冷静な口調だが、どこか感じも違う。言葉1つ1つから、強さと覚悟が滲み出ていた。
「かなり刺激を受けてきました。試合には出られなかったけど、僕にとってはプラスの経験だったと捉えたい。このままじゃ、自分は代表で戦える選手じゃないと思った。オーストラリア戦を見て、同じ中盤の選手があれだけ走って、球際にも行って、なおかつ前に攻撃にも出る。今の自分が、あそこまでできたかどうか。そこが追いついていかないと、あのピッチには立てない」
見つめていたのは、自らに欠落していた部分だった。選手にはさまざまなタイプが居るが、プロの世界は概ね自信を持つ人間が多い。通用する部分を自分の中で噛み締め、そこを拠り所にしていく選手もいる。
高萩は、違った。
「もちろん攻撃面では、しっかりボールを受けて、前線と中盤のつなぎ役としてできると感じた。でも、今の代表のピッチに立つために何が必要かは、明らかですから」
かつてのプレーと比べれば、十分闘える選手になった印象は強い。それでも高萩は感じている。自分には、まだまだボールを奪うことも、運動量も足りないと。
Kリーグのハードさを、Jリーグで失いつつある?
韓国から帰ってきた頃、こんな話をしていた。
「向こうではどのチームもガツガツとハードプレーをする。それができないと、Kリーグでは戦えない。自分もボランチにコンバートされ、自ずとそういうプレーが求められていった」
久しぶりの日本で高萩が変わったと感じた理由は、そこにあった。
今、高萩は自身についてこう話す。
「韓国から帰ってきて8カ月。いい意味も悪い意味も両方あるけど、Jリーグの感覚になっていたところもあった」
日本国内の試合は、プレー強度が低い。これは日本人同士が戦う上での体格的な理由もあるが、例えば代表の練習でも海外組と国内組ではインテンシティの高低にまだまだ差があるなど、埋めきれないギャップとして残る。
高萩も異国で培ってきたタフさが、少しずつ減退してきている。そんな自覚を、代表で感じさせられたのだという。