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高萩洋次郎が味わった敗北感と情熱。
「このままじゃ代表では戦えない」 

text by

西川結城

西川結城Yuki Nishikawa

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photograph byAsami Enomoto

posted2017/09/09 08:00

高萩洋次郎が味わった敗北感と情熱。「このままじゃ代表では戦えない」<Number Web> photograph by Asami Enomoto

W杯行きを決めたオーストラリア戦、高萩洋次郎は歓喜の輪の中にいた。次はピッチに、彼はそう思っているはずだ。

天才肌のスタイルから、完全に守備の選手に。

 その中で、高萩は序盤戦から奮闘が続いている。彼がここまでチームで主に見せている貢献は、守備面にある。前述した天才肌のプレースタイルとは、一線を画す姿だ。

 初めはダブルボランチの一角に入った。以前のイメージがあったため、より攻撃に傾くプレーを展開するかと思いきや、どの試合でも味方の位置取りを細かく確認し、守備のバランスを取る。そして機を見て相手の球際を襲いにかかると、これもかつての印象にはなかった激しい寄せでボールを刈り取ろうとする。完全に守備の選手がそこにいた。

 シーズン中盤からは、ワンボランチ、いわゆる中盤のアンカーを任されている。1人で中央エリアを担うため、余計にバランス意識が問われるポジション。そこでも高萩は均整の取れたプレーを見せる。

 どっしりと真ん中で構えるだけでなく、自身のエリアに入ってくる敵には容赦なくハードに寄せ、また味方へのパスでも気の利いたボールを散らしている。本来の武器である攻撃センスを表現することも、忘れていない。

 声の指示、ハードワーク、プレーの安定感。新加入ながらどれを取っても今季のFC東京で最も高いアベレージでプレーしている選手が、高萩だ。

それでもハリルは「守備の面で修正点」と指摘。

 本来であれば、2列目と言われる攻撃的MFに入って、より攻撃的なプレーに傾倒させたいところでもある。ボランチの位置からは得意のスルーパスを通すにも前線まで距離があるため、なかなかチャレンジする機会は少ない。今でも試合中にポジション移動で高い位置に入ると、敵の裏を突く鋭いパスが出てくる。その瞬間、瞬間のキレ味あるプレーと判断を見ると、高萩の攻撃性はやはり捨て難いのである。

 ただ彼が久しぶりに日本に帰国し、そして代表に選出された理由は、プレーがバージョンアップされていたからでもある。それは、攻めるだけでなく守れる選手へと変貌を遂げていたから。

 ところが、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は招集時に、「まだ守備の面で修正点はいくつかある」と鋭く指摘した。ディフェンスへの意識はかなり成長を見せる彼も、厳格な指揮官の目にはまだ足りないと映る。そして、その足りない何かを、高萩自身が今回の代表で痛感することになったのだった。

【次ページ】 「このままじゃ、自分は代表で戦える選手じゃない」

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